過失運転致傷罪と緊急避難
過失運転致傷罪と緊急避難について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事案例】
Aさんは静岡県浜松市の国道で信号待ちをしていました。
その際車が割り込んできたためクラクションを鳴らしたところ、車からBさんが降りてきてAさんの車の窓ガラスを殴りつけてきました。
Aさんが恐怖を感じ逃げようとして急発進をしたところ、後方からバイクに乗ったVさんと衝突し、Vさんは足の骨を折る怪我をしました。
Aさんは静岡県浜松中央警察署で過失運転致傷罪の疑いで話を聞かれることになったのですが、Aさんは「交通事故を起こしたのはBから逃げようとしたからだ。だから自分が交通事故を起こしたのはしょうがないことだ。」と考えているため、刑事事件や交通事件に強い弁護士を探しています。
(フィクションです)
【交通事故はどのような罪になるか】
交通事故を起こし人に怪我をさせた場合、どのような罪になるのか
条文には
「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」
(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)
とあります。
【Aさんが車を急発進させたことについて】
Aさんは自分が交通事故を起こしたのはしょうがないと考えています。
これは「緊急避難」という考え方に基づいたものと思われます。
【緊急避難とは】
緊急避難とは条文で
「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。」(刑法第37条)
とあります。
つまり、緊急避難が完全に認められれば、罰せられないということです。
【緊急避難が成立する要件】
緊急避難が成立するためには
1現在の危険があること
現在正に危険が迫っている必要があります。
未来に起こるかもしれない危険、過去に起こった危険については認められません。
2避難の意思があること
1の危険を避ける目的があることが必要です。
3危険から避難するための必要最低限の行為であること
例えば人を押して道を空ければ逃げれる状態で、必要もないのに人を殴って道を空けようとする行為は認められません。
4発生した害が避けようとした害の程度を超えないこと
5その行為が唯一の手段であり、真にやむをえない行為であったこと
等が必要になります。
【事案例について】
Aさんは、自分が車を急発進させたのはBさんから逃げるためだったからしょうがないと思っています。
しかしAさんの場合は、110番通報をする、他の車に注意しながら避難できた可能性が有ることから、車を急発進させた行為は「その行為が唯一の手段であり、真にやむをえない行為」とは認められにくいと考えられます。
よってAさんには、過失運転致傷罪が成立すると思われます。
【弁護活動について】
先に述べたとおり、緊急避難が成立するためには厳しい要件が必要です。
ですので、自分の行為が緊急避難にあたるのではないか等と疑問に思うことがあれば、刑事事件・交通事件に強い弁護士に早急に相談するのが良いでしょう。
また、過失運転致傷罪に問われた時は、事故の相手方の方と早急に示談交渉を行い、示談が成立すれば起訴猶予による不起訴処分を目指すこともできます。
起訴猶予による不起訴処分となれば、前科にはなりません。
また、過失運転致傷罪で逮捕・勾留されることになっても、早期に釈放や保釈による身柄拘束を解くための弁護活動を行うことも可能です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、年間多数の過失運転致傷罪への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が過失運転致傷罪で話を聞かれることになった方、ご家族が逮捕されてしまいお困りの方、緊急避難が成立するか相談したい方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。