前科を避けたい

・前科がつくとどんな不利益があるのか

まず,将来別の刑事事件を起こした場合に,前科があることで不利になる場合があります。

刑事裁判の際,前科が存在することは,マイナス方向に考慮されます。前科があることで,刑が重くなることがありえます。さらに,刑事裁判の前の段階でも不利益を被る可能性があります。具体的には,前科があると刑が重くなりうることから,捜査機関から,重い刑を避けるために逃亡するのではなないかと疑われ,逮捕・勾留されやすくなる可能性があります。

次に,日常生活を送る上で前科によって不利益を被る場合があります。

第1に,前科があると就けなくなってしまう職業があります。例えば,国家公務員や地方公務員,自衛隊員等の公務員,弁護士,公認会計士,行政書士,司法書士,不動産鑑定士等の士業,警備業者・警備員,学校の教員などです。これらの職業については,すでに資格を有している人は一定期間資格に基づいて仕事が行えなくなる他,資格を失ってしまう場合もあります。この点については後述します。

第2に,社会的信用を喪失してしまうことが挙げられます。

具体的には,前科があることが判明した場合,トラブルを起こして会社に迷惑をかけ かねない人物だと評価されて出世に影響したり,前科があることでパートナーに敬遠されて結婚に支障をきたしたり,新しい事業を起こそうというときに資金借り入れがスムーズにいかなくなることなどが考えられます。また,自身のみならず,親族も,親戚に前科者がいるということで,社会生活上の支障を生じる可能性があります。

もっとも,警察などの捜査機関以外には,公式に前科を調べることは出来ません。したがって,過去の報道等によってインターネット上に情報がある場合等でなければ,自ら申し出ない限り,前科があることが勤務先等に発覚することは通常ありません。

なお,就職活動をする際,企業によっては,前科の有無を本人に確認する企業もあります。

前述のように,企業が前科の有無について調べることはできないのですが,前科があるのに前科がないと回答してしまうと,後に前科が発覚した場合経歴詐称に当たるので注意が必要です。前科を正直に打ち明けて不採用になるリスクと,後に発覚した場合に経歴詐称で解雇されるリスクを比較して,正直にいうべきかどうか判断することになります。

第3に,海外旅行をする上で,一定の制限を受けることがあります。

前科があっても,パスポートは取得できます。しかし,アメリカ等,渡航者に対して前科の有無の申告を求める国があります。アメリカの場合には,渡米する前にビザを取得する必要があります。

 

・前科と前歴の違い

「前科」とは有罪判決により刑が言い渡された事実のことです。これに対し,「前歴」とはより広く,警察や検察などの捜査機関により被疑者として捜査の対象となった事実のことです。前科には懲役や禁錮のみならず罰金や科料が言い渡された場合が含まれます。また,実刑に限らず,執行猶予の場合も含まれます。前歴には,逮捕勾留はされたけれども不起訴処分になったような場合も含まれます。

 

・国家資格と刑罰の関係

国家公務員の場合,禁錮以上の刑の前科がついてしまうと,当然に資格が失われてしまいます(国家公務員法76条,38条2号)。地方公務員の場合も同様です(地方公務員法28条4項,16条2号)。その他の国家資格でも,法律で,禁錮以上もしくは罰金以上の前科がつく場合に資格を取り消すことができるようになっているものがあります。また,資格の取り消しを免れても,一定期間資格が停止されることになります。

これに対し,不起訴で事件が終了したような前歴に過ぎない場合には,資格が失われることはありません。逮捕されただけでは,前科がつくことはありません。国家資格との関係では,早期に弁護士に依頼し,前科がつくことのないように,不起訴を獲得すべく動いてもらうことが重要です。

 

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