刑事免責制度(刑事訴訟法157条の2・157条の3)

・はじめに

証人尋問を受ける際,供述しようとする内容が,自己の犯罪にかかわる場合は,その供述をもとに処罰を受ける可能性があるため,証言を拒絶することができます(刑事訴訟法146条)。

この証言拒絶権を奪う代わりに,証言内容やそこから派生した証拠の利用を証人の刑事事件で利用させないという制度が,刑事免責の制度です。

 

・対象犯罪

いわゆる司法取引と異なり,対象犯罪に限定がありません。刑事免責制度は,全ての犯罪で利用することができます。

 

・他人の刑事事件であること

証人として出廷させることを前提とするものですから,他人の刑事事件の中で,供述することが求められます。

 

・要件

手続き上は,検察官が刑事免責を裁判所に対して請求し,裁判所が免責決定をするという形になります。

検察官が刑事免責を請求するのは,①当該事項についての証言の重要性,関係する犯罪の軽重及び情状その他の事情を考慮し,②必要と認めるときとされています。

具体的には,その証人の証言が,犯罪立証に不可欠かどうかや,訴追されている罪の法定刑などを考慮して決定すると考えられます。

 

・効果

免責決定を受けると,その証言に基づいて処罰を受けることはありませんし,証言から派生した証拠を用いることも出来ません。そうすると,証言すればするほど派生証拠になる証言が増え,免責の範囲を広げることができます。

ただし,犯罪行為を免責する規定ではありませんから,証言やそれから派生した証拠以外の証拠を用いて犯罪を立証することができる場合には,訴追をされる可能性があります。

また,証言の内容を事実上の参考とすることは可能となっています。したがって,検察官が,黙秘をしている被疑者・被告人が刑事免責の手続きを利用して証人として呼び,強制的に証言をさせることで情報を得ようとするということも考えられるところではあります。なお,免責決定が出ている状況では,証言拒絶は証言拒絶罪(刑事訴訟法161条)の対象となります。

 

・まとめ

刑事免責の制度を利用することで,その証言に基づいて処罰を受けることがなくなり,証言から派生した証拠を立証に用いることも出来なくなるという点では,刑事免責制度の利用は被疑者・被告人に有利といえます。他方,供述がきっかけで,かえって刑事訴追の可能性を高める場合が考えられるところであり,被疑者被告人に不利になる場合もあります。

刑事免責の利用を考えられている場合弁護士に相談することをお勧めします。

 

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