強盗

・強盗罪について

暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取した者は,強盗の罪として,5年以上の有期懲役に処されます(刑法236条1項)。暴行または脅迫を用いて財産上不法の利益を得,または他人にこれを得させた者も,同じく5年以上の有期懲役に処されます(刑法236条2項)。

 

・暴行または脅迫の意義

暴行は不法な有形力の行使であり,脅迫は害悪の告知をいいます。この点は他の罪における暴行,脅迫と同じです。

この暴行または脅迫は財物の強取目的で行われたものである必要があります。盗みをした者が窃盗とは無関係に相手を殴っても暴行となるだけです。

 

・強取

強取とは盗むということですが,盗むにあたり他人に対し暴行や脅迫を用いている点で通常の窃盗より悪質性が高いとされ,重い刑罰を科されます。

 

・財産上不法の利益

暴行や脅迫を用いて財産上の利益を得ても強盗罪となります。

支払い債務などが財産上の利益に当たります。タクシーの運転手に暴力をふるったり脅したりしてタクシー代金を踏み倒すことも強盗になります。

 

・強盗予備

強盗の罪を犯す目的でその予備をした者は,2年以下の懲役に処されます(刑法237条)。店員を脅すための道具を準備するなどの行為が予備にあたります。

 

・事後強盗

窃盗をした者が,財物の取返しを防ぎ,逮捕を免れ,または罪証を隠滅するために,暴行または脅迫をしたときも,強盗と同じ扱いとされます(刑法238条)。これは事後強盗と呼ばれます。

万引き犯が追いかけてきた保安員を殴り倒したり,留守宅に侵入して盗みを働いた後で帰宅した家人を脅して逃げるような場合が,事後強盗となります。

事後強盗といえるためには,暴行または脅迫が「窃盗の機会」に行われたものでなければなりません。窃盗の機会といえるのは,ただ逃げている時に限られません。犯行からの時間,犯行現場からの距離,財物がいまだ取り返され得る状態かなどを考慮して判断されます。

 

・昏酔強盗

人を昏酔させて財物を盗んだ場合も強盗となります(刑法239条)。

 

・ひったくり

ひったくり行為自体が相手に対する暴行となり得るため,ひったくりの態様によっては,強盗となることがあります。

 

・強盗致死傷

強盗が人を負傷させたときは無期または6年以上の懲役,死亡させたときは死刑または無期懲役に処されます(刑法240条)。

脅しに使った包丁で刺したなど凶悪なケースだけでなく,盗みを働いて逃げるときに保安員を押し倒して怪我をさせたなどでも強盗致傷となります。

 

・刑罰の重さ

強盗罪の刑罰は5年以上の有期懲役であり,執行猶予を付けることができません。

相手が負傷してしまうと,強盗致傷となり,無期懲役もあり得ることになってしまいます。

 

・刑務所に入れられないためには

窃盗の際に暴行脅迫があっても,その暴行脅迫が財物強取を目的としたものであるかを判断するのは容易ではありません。

検察官が,財物強取の目的の暴行脅迫であるとの確信を持てない場合,窃盗と暴行・脅迫で起訴されるだけで済む場合があります。この場合,執行猶予や略式命令で済むこともあり得ます。

暴行,脅迫や窃盗自体は,罰金で済んだり執行猶予があり得る罪です。また,窃盗,暴行などとの差が大きくないこと,強盗罪の法定刑が重く,起訴して有罪判決が出れば実刑の懲役になってしまうことから,暴行脅迫が軽微で被害金額も大きくはなく,被害者と示談が成立した場合などは,起訴猶予も十分あり得ます。起訴猶予まで行かずとも,検察官の方で,窃盗と暴行に分けて罰金で済ませることもあります。

また,強盗で起訴されたとしても,暴行が財物奪取を目的としたものとは認められないとして,窃盗と暴行の併合罪に認定落ちする場合もあります。その他にも,脅迫が犯行を抑圧させるものとまではいえないとして,恐喝に認定落ちする場合もあります。

弁護士は事件を丁寧に把握し,検察官や裁判官に悪質な強盗ではないことを訴えていき,適切な処分を獲得していきます。

 

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