※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。 当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。 |
・風営法・風適法の概要について
風営法又は風適法とは、どちらも風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の略称です。
風営法又は風適法は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するために風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間・営業区域等を制限し及び年少者をこれらの営業所へ立ちいらせることを規制するとともに、風俗営業の健全化に資するためその業務の適正化を促進する等の処置を講ずることを目的としています。
~2025年風営法改正の概要~
風営法は2025年に改正が行われており、一部の規定を除き、同年6月28日から施行されています。主な改正点を以下にまとめています。
①接待飲食営業に係る遵守事項の追加
ホストクラブやキャバクラといった接待を伴う飲食店営業に関して、新たに遵守事項が追加されています。法改正前には明文化されていなかった、悪質な勧誘・接待行為が禁止されます。
具体的には、
- 料金体系や請求額に関する虚偽の説明や誤認を招く説明
- 恋愛感情等につけ込んだ飲食の勧誘
- 明確な注文意思を欠く飲食物等の提供
が禁止されます。
これらの遵守事項に違反した場合、刑事罰こそ科されませんが、営業停止処分や許可取消しといった行政処分の原因にはなってしまいます。
②接待飲食営業に係る悪質行為の明確化・罰則化
営業者による特に悪質な行為は、①の遵守事項と区別された禁止行為として、刑事罰の対象になっています(6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又は併科)。
具体的には、⑴威迫による注文や支払いの強要、⑵売掛金(未払い料金)回収を目的とした違法行為の強要が禁止行為に該当します。
⑵は社会的にも問題となった、客を性風俗店で働くよう要求することなども含まれており、⑴と異なり威迫だけでなく、誘惑して要求した場合も違法となります。
③性風俗店によるスカウトバックの禁止
性風俗店の経営者がスカウトマンから働き手の紹介を受けた際に、紹介者へ紹介料のキックバック(スカウトバック)を行うことが禁止されました。6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又は拘禁刑と罰金の併科が罰則として規定されています。
④無許可営業等に対する罰則の強化
無許可で風俗営業を行った者への罰則が、従来の「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から、「5年以下の拘禁刑若しくは1000万年以下の罰金又は拘禁刑と罰金の併科」へと大幅に引き上げられています。代表者等の個人のみならず、法人に対しての場罰則も「200万円以下の罰金」から「3億円以下の罰金」と引き上げられています。
⑤風俗営業許可に係る欠格事由の追加
従来は、暴力団関係者や風俗営業許可の取消処分を受けて5年が経過していない者などが、風俗営業の許可を得られない欠格事由の対象となっていました。
法改正により、
- 親会社等が許可取消処分を受けた法人
- 立入調査後に許可証を返納した者
- 暴力的不法行為者に支配されている者
が、新たな欠格事由の対象となっています。
これらの欠格事由の新設により、風俗営業許可の仕組みを実質的に潜脱することが防止されます。なお、欠格事由の追加に関しては、2025年11月28日以降の許可申請からの適用となります。
・風営法の罰則について
風営法(風適法)の違反で、最も多いのが無許可営業(風営法3条1項)です。また、風俗営業の許可を取得する際に、虚偽の事実で申請をしたり(風営法49条2号)、実際の営業者とは別の者が許可を受け、営業者に名義を貸したりする行為も風営法による規制の対象です(風営法11条)。
これらの他にも、風俗店に、18歳未満の者を働かせたり(風営法22条3号・4号)、客として入店させたりした場合など(風営法22条5号)、風俗営業に関する様々な行為が規制対象とされています。
主な風営法違反の罰則は、下記のとおりです。
①風俗営業の無許可営業
虚偽・不正手段による許可の取得
名義貸し禁止違反
営業の停止等処分の違反
店舗型性風俗特殊営業の禁止区域等営業など
⇒5年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、またはこれらの併科(風営法49条)
②構造設備の無承認変更
構造設備の無承認変更
不正手段による承認の取得
18歳未満の者に接待行為をさせること
18歳未満の者を客とすることなど
⇒1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科(風営法51条)
③客引き(つきまとい、立ちふさがり行為を含む)
⇒6か月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科(風営法53条)
④広告制限地域への広告物の設置
従業者名簿の備付け義務違反等
従業者の身分確認規定の違反
公安委員会への報告義務違反や警察官の立ち入り妨害など
⇒100万円以下の罰金(風営法54条)
⑤許可申請書等の虚偽記載
深夜酒類提供飲酒店営業の無届営業など
⇒50万円以下の罰金(風営法55条)
⑥営業許可証の掲示義務違反
風俗営業に係る変更届出書提出義務違反など
⇒30万円以下の罰金(風営法56条)
・性風俗関連特殊営業に関する規制
風営法では、特定の種別の営業について、これを「性風俗関連特殊営業」と定義し、風俗営業とは異なり届出制としています。性風俗を公安委員会が「許可」するのは適当でないという理由からです。
①無届営業
⇒6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又は併科(風営法27条・53条5号)
②店舗型に係る営業所の禁止区域等営業
⇒5年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金、または併科(風営法28条・49条5号)
③18歳未満の者を風俗営業等において従事させること・客とすること
⇒1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、または併科(風営法22条1項3号・4号・風営法51条1項)
④広告制限区域等における看板の設置
⇒100万円以下の罰金(風営法28条5項・54条2号)
⑤客引き(「立ちふさがり、つきまとい行為」も含む)
⇒6ヶ月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金または併科(風営法22条1項1号・2号・53条1号)
⑥店舗型・無店舗型性風俗特殊営業の無届業者による広告宣伝
⇒100万円以下の罰金(風営法27条の2・54条1号)
⑦外国人ホステスの就労資格の確認義務懈怠
⇒100万円以下の罰金(風営法36条の2・54条4号)
・行政処分について
風営法に違反した場合、刑事罰以外にも行政処分が下される可能性があります。
具体的には、違反の態様により「許可取消し」「営業停止」「指示」という3つの処分を行うことができます。
・静岡県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例
各都道府県で風営法の委任事項を細かく決めたり、風営法よりもさらに制限を設けたりする例があります。
静岡県の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例では、例えば、法13条1項但書の風俗営業の営業を営むことができる時間について、午前1時と定めています(同条例4条2項)。