刑事裁判-公判の概要

・公判手続とは

公判手続とは,事件が裁判所に係属してから判決が確定して裁判所の手を離れるまでの全過程のことをいいます。

公判期日では,審判者である裁判官の面前で,当事者である検察官及び被告人が同時かつ対等に審理に参加します。一定の重大事件(死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件),公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については,弁護人も出頭しなければ法廷を開くことはできません。

公判手続において,検察官は,公訴事実(検察官が審判を求める犯罪事実)の存在及び被告人の犯人性を主張立証します。これに対し,被告人は,弁護人の援助の下で自己の主張を提示し,反証を行います。裁判所は,審判者として公平な第三者の立場から,法定の秩序を維持し,適切な訴訟指揮を行って当事者の攻撃・防御を制御しつつ,公訴事実が認められるかどうか,認められるとして具体的にいかなる刑を科すべきかを判断します。

 

・公判手続の流れ

公判手続は,

  1. 冒頭手続,
  2. 証拠調べ手続,
  3. 弁論手続,
  4. 判決

の4段階で進行します。①は,誰が,いつ,どこで,どのような犯罪を行ったことに関する裁判を行うのかということを明らかにしようとする手続です。②では,両当事者が請求した証拠の取調べが行われます。③では,検察側および弁護側それぞれが事件についての意見を陳述します。そして,④で裁判所が最終的な判決を下します。

 

・冒頭手続

まず,裁判長が被告人に対して氏名や本籍地・住所地等を質問し,出廷している被告人が起訴状に記載された被告人であることを確認する人定質問が行われます。

次に,検察官が起訴状朗読を行います。被告人が,いつ,どこで,どのようなことを行い,その行為が何罪に該当するとして起訴されているのかを述べることで,これから行う裁判の対象を明示します。

次に,裁判長は,被告人に対し黙秘権等の権利があることを告知します。

次に,裁判官は被告人と弁護人に対し,起訴状に書かれた事実に間違いがないかどうか質問して,被告人らに事件に関する陳述の機会を与えます。

 

・証拠調べ手続き

証拠調べ手続きでは,まず,証明責任を負う検察官が,これから証拠によって証明しようとする事実を述べます。これを検察官による冒頭陳述と呼びます。なお,公判前整理手続が行われた事件(例えば裁判員裁判対象事件)については,弁護側も冒頭陳述を行わなければなりません。

次に,証拠調べの請求,証拠決定,証拠調べの実施が行われます。冒頭陳述の後,検察官は証拠調べの請求をします。証拠には,大きく分けて証拠物(物証),証拠書類(書証),証人(人証)があります。

検察官の証拠調べ請求があると,裁判所は,弁護側の意見を聞いた上で,証拠として取り調べるか否かを決定します。検察官の証拠調べ請求に続いて,弁護側も証拠調べ請求を行うことができ,検察官が意見を述べます。

裁判所が証拠として取り調べることを決定した場合,法廷において証拠調べを実施しますが,物証は「展示」により,書証は「朗読」により,人証は「尋問」により行うのが原則です。ただし,書証については,裁判長が訴訟関係人の意見を聴き相当と認めた場合に限って要旨の告知(要点だけを説明する方法)によることができます。

なお,証拠のうち,被告人の自白を記載した供述書・供述調書及び被告人の自白を内容とする第三者の伝聞供述の証拠調べについては,他のすべての証拠についての証拠調べが終わった後に行うこととされています。また,被告人が自分の意思で供述を行う場合には,被告人質問における被告人の供述も証拠となります。

 

・弁論手続

証拠調べ手続の後,検察官,弁護側が,それぞれ事件に関する意見を述べます。「事件に関する意見」というのは,

  1. 有罪か無罪かという点,
  2. 犯罪の悪質性や被告人の再犯可能性等情状に関する点,
  3. 有罪だとすれば,どの程度の刑を科すのが妥当かという点

に関する意見です。

検察官の述べる意見は,論告と呼ばれ,刑の重さに関する意見は特に求刑と呼ばれます。これに対して,弁護人の述べる意見は弁論と呼ばれます。弁護側が有罪であることを認めている場合には,「情状」について述べることになり,弁護人は執行猶予付きの刑または減刑などの処置を求める弁論をします。また,最後に,被告人自身も最終陳述を行う機会があります。

 

・判決

当事者の主張を聴き,証拠調べの結果を踏まえ,裁判官(裁判所)は事件についての有罪または無罪の判決をし,これを裁判長が宣告します。有罪判決の場合,刑の言渡しがなされます。執行猶予が付与される場合は有罪判決と同時に言渡されます。

第1回公判から判決までどの程度の期間になるかですが,認めている事件であれば,1回の公判期日で結審して,そのおよそ10日後か2週間後くらいに判決が言い渡されます。争われている事件(否認事件)では,早くても2,3か月かかり,事案によっては1年以上かかる場合もあります。

 

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