静岡県静岡市で未成年者を連れ去り誘拐罪で逮捕
静岡県静岡市葵区在住のアルバイトAさんは、SNSで「家出をしたい」と書き込んだ女子中学生V(14歳)を自宅アパートに数日間宿泊させたり、車でドライブに連れ出す等したとして、静岡県警静岡中央警察署によって未成年者誘拐罪の疑いで逮捕されました。
Aさんは未成年者誘拐罪の事実を否認しており、留置係の警察官を通じてAさんの両親に対して事件を弁護士に依頼するよう頼みました。
(フィクションです)
上記刑事事件例は、今年7月31日、茨城県警常総署と県警人身安全対策課が、神奈川県平塚市の自称会社員の男(38歳)を未成年者誘拐罪の疑いで逮捕した事案をモデルにしています。
警察によれば、被疑者は7月2日、茨城県南地域に住む県立高校2年の女子生徒(16歳)に対し、SNSを使って「家を用意してあげる」「成人するまで面倒をみる」などと誘い、翌3日に平塚市内まで来させて、7日までの間、市内の関係者宅などに連れ去り、誘拐した疑いが持たれていますが、警察の調べに対して被疑事実を否認している模様です。
常総警察署は、女子生徒の母親から3日に行方不明の届け出を受けて捜査を開始し、7日に男から母親に「話し合いたい」と連絡があったため、警察官が同日深夜に待ち合わせ場所に指定された平塚市内のファミリーレストランで生徒を保護しました。
女子生徒は、昨年神奈川県から茨城県に引っ越しており、引っ越し前の神奈川県にいた時に被疑者と顔見知りだったとのことです。
【SNSでつながる家出未成年者の誘拐】
刑法224条は、未成年者を略取または誘拐した者に対して、3月以上7年以下の懲役を科しています。
後者の誘拐を行う罪を、一般に「未成年者誘拐罪」と言います。
未成年者は一般的に思慮が浅慮であることから、成人に対する誘拐罪は犯罪の成立にあたって営利等の目的が必要とされているところ、未成年者誘拐罪においては営利等要件を必要としておらず、未成年者に対する法的保護を厚くしています。
「誘拐」とは、虚偽の事実をもって相手方を錯誤に陥れる場合のほか、その程度に至らない甘言をもって相手方の判断を誤らせることも含みます(判例)。
上記のように、未成年者の家出を助けるために住居を提供する場合、一見被害者である未成年者の同意があるのだから「誘拐」には該当しないのではないかと思われます。
しかし、判例によれば、未成年者誘拐罪の保護法益は、被害者である未成年者の自由のみならず、両親や後見人等の監護者・監督者の権利も含むとしているため、たとえ未成年者の合意の上での家出を手助けした場合でも、監護権者等に対する権利侵害として未成年者誘拐罪が成立する可能性があります。
昨今、SNSで知り合った未成年者に対する未成年者誘拐罪が目立ちます。
例えば、平成29年11月、群馬県大泉町で、SNSで告白のために呼び出した女子高生を自分の乗用車に乗せ数時間連れまわしたという未成年者誘拐罪の逮捕事案がありました。
未成年者誘拐罪の刑事事件では、被疑者による身勝手な未成年者の連れ回し等のケースであれば、被害者の保護者の処罰感情が極めて大きくなることが多いですが、未成年者の家庭でのトラブルや家出に至った経緯等によっては、刑事処罰までを求めることはしないとの示談が成立する可能性も残されています。
このような未成年者誘拐罪の刑事事件では、刑事事件の示談交渉に長けた刑事事件弁護士に弁護を依頼することを強くお勧め致します。
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