静岡県島田市で自宅に放火で逮捕
静岡県島田市在住の無職Aは、詐欺罪の疑いで静岡県警島田警察署から捜査を受けており、ある朝警察官が逮捕令状を持ってA宅のアパートに逮捕に来たところ、家の鍵をかけて立てこもりを敢行しました。
しかし、警察官が実力行使で自宅に入ろうとしていることに絶望し、逮捕されたくないとの思いから、Aさんは自宅にガソリンをまいて放火しました。
火はアパート全部に燃え広がり、約3時間後に消し止められました。
Aは、警察が出火にひるんだ隙に、アパート3階の部屋の窓から飛び降りて足の骨を折る負傷を負いましたが、幸い他の住民に負傷者は出ませんでした。
警察は、Aを詐欺罪および現住建造物等放火罪の疑いで逮捕しました。
(※フィクションです)
上記刑事事件例は、今年8月29日午後1時10分ごろ、福島市陣場町で、福島北警察署の警察官らが窃盗罪の疑いで逮捕しようとしていた男が自宅兼店舗に立てこもり、ガソリンのような液体をまいて放火した刑事事件をモデルにしています。
これにより、被疑者男性は非現住建造物等放火罪および窃盗罪の疑いで逮捕されました。
逮捕された被疑者は「放火したのは間違いない」と事実を認めており、放火後、建物2階窓から飛び降り、気道にやけどをして右足首を骨折して市内の病院に搬送されたようです。
出火当時は棟続きの他の2店舗に計2人がいたものの、幸いにも逃げていたため負傷はなかったとのことです。
【現住建造物と非現住建造物の放火の違い】
判例によれば、「放火」とは、故意をもって、自分が点じた火が燃焼の目的である建造物等に燃え移り、独立して燃焼し続けることを意味し、他方、「失火」とは、過失によって(放火の故意がなく)所定の対象物を焼損させた場合を言います。
刑法は、被疑者・被告人の責任(犯罪の故意等の主観的要素)を重要視し、罪を犯す意思(故意)がない行為は罰しない(刑法第38条第1項)としていることから、現住建造物等放火罪(刑法第108条)については、死刑または無期もしくは5年以上の懲役を科しているのに対して、失火罪(刑法第116条)については、50万円以下の罰金を科して法定刑に大きな差をつけています。
現住建造物等放火罪における「現住建造物」とは、建造物が人の住居に使用し、または人の現在するものであることであれば足りると解されており、その建造物使用の主な目的は問わないとされています(判例)。
よって、前述した実際に起きた刑事事件のように、自宅兼店舗のように自分以外の人間が存在しない建物に自ら放火した場合には、現に人がいない建造物に対する放火として非現住建造物放火罪が成立するに留まり、かつ、この場合において、当該建物が自己所有の建物であれば刑は軽くなる(2年以上の有期懲役から6月以上7年以下懲役へ軽減)ばかりでなく、公共の危険を生じなかった場合には刑事罰が科されないこともあり得ます。
ただし、人の現在する建物と非現住・非現在の建物が全体として一個の現在建造物として認められる場合で、各建物が相互に連結されている等の事情により非現住・非現在の建物から現在の建物への延焼可能性が認められる場合には、現住建造物等放火罪が成立する余地があると解する判例も存在するため、住宅等が密集した繁華街での非現住建造物への放火に対して現住建造物等放火罪が成立する恐れがあることも注意が必要です。
放火に関する刑事事件で、現住建造物等放火罪が成立する可能性がある事案では、科される法定刑が非常に重く、自分が関わった行為について適切に捜査機関に主張していくことが極めて重要となりますので、自分が不当に重い刑事責任を負わないためにも、放火の刑事事件に詳しい弁護士に相談することが大切です。
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