自首と出頭の違い

自首と出頭の違い

【具体例】

Xは街の駐輪場から、一台数十万円相当のロード自転車を盗んで、小遣い稼ぎをしようと考えた。
Xは東京都大田区蒲田の蒲田駅前の駐輪場を物色していると、狙いの高級ロード自転車を発見した。
Xは、ホームセンターで事前に購入しておいた工具を使って、ロード自転車に取り付けられている鍵を破壊して、ロード自転車を駐輪場から持ち去り帰宅した。
Xは、数時間後、駅前の駐輪場の脇を通った際に、駐輪場で自転車を探している様子の大学生を見かけた。
Xは、大学生は自身が盗んだロード自転車の持ち主だと察した。
Xは被害者の大学生が警察に被害届を出し、警察が盗難犯を探したら、近所に住んでいる自分はすぐに見つかってしまうと考えて、大ごとになる前に自ら蒲田警察署にロード自転車を盗んだ旨を話に行った。

罪を犯した犯人が自らの意思で警察に行くことを一般的に「自首」と理解している人は多いのではないでしょうか?
しかし、この様な理解は正確ではなく、「自首」と「出頭」の意味を混同している場合が少なくありません。
法律的に「自首」と「出頭」は似て非なるものです。
今回は、「自首」と「出頭」の違いについて解説していきます。

【自首とは?】

「自首」とは、罪を犯したものが捜査機関に発覚する前に、自発的に捜査機関に自己の犯罪事実を申告して処分を求める意思表示のことを意味します。
捜査機関の取り調べに応じて犯罪事実を述べることは、自白であって、自首ではありません。
刑法 第42条 自首等
1.罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2.告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。

【自首の要件】

刑法42条1項の条文から以下のような自首の要件が導き出せます。
① 「罪を犯したものが」
② 「捜査機関に発覚する前に」
③ 「自首」すること
②の「発覚する前に」とは、犯罪事実が全く発覚していない場合の他、犯罪事実は発覚しているが犯人が誰であるかが発覚していない場合も含みますが、単に所在が不明である場合には含まれません。
③の「自首」とは、犯人が自発的に自己の犯罪事実を捜査機関に申告することを要しますが、申告の方法は他人を介してする方法でも可能です。
また、申告するに際し、虚偽の事実を述べたときでも、「自首」として成立します。

【自首の効果】

「自首」することにより、刑が任意的に減刑されます。
「自首」が任意的刑の減刑事由とされている趣旨は、犯罪の捜査を容易にするという政策的意図と、犯人の改悛による非難の減少に基づくと理解されています。

【出頭とは?】

「出頭」とは、単純に警察署や裁判所などに行くことを意味します。

【出頭の効果】

「出頭」をしたとしても、法的な効果は発生しません。
よって、たとえ指名手配されている犯人が自発的に犯罪事実を申告して、処罰を求めたとしても、減刑は認められません。
しかし、反省や捜査協力の意図から自発的に捜査機関に、処罰を求める行為は酌量減軽の事由となり、処罰が軽減される可能性があります。

【結論】

結論、本件事例では「自首」、認められる可能性が高いと考えられます。
Xは自己の自転車窃盗の犯罪事実を、自ら捜査機関に申告しに行っているため、「自首」の要件である①「罪を犯したものが」、③「自首」の要件は充足しています。
しかし、「自首」か「出頭」かの分岐点は要件②「捜査機関に発覚する前に」の要件が充足しているの点になります。
本件事例の段階では、捜査機関はおそらくXの自転車窃盗の事実を認知していないため、「捜査機関に発覚する前に」の要件を充足しそうです。
他方で、警察が直接Xに連絡を取ってきたような段階では、警察はXの自転車窃盗の事実を把握しており、「捜査機関に発覚する前に」ではなくなっている可能性が高いです。

【まとめ】

どのような事件・事故においても「自首」又は「出頭」はいずれにしても早期に行うことが望ましいです。「自首」,「出頭」をしたいけれど対応が不安という方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の刑事事件専門弁護士まで一度ご相談ください。

 

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