・不処分とは
「家庭裁判所は,審判の結果,保護処分に付することができず,又は保護処分に付する必要がないと認めるときは,その旨の決定をしなければならない」(少年法23条2項)と定められています。この決定のことを不処分といいます。
・「保護処分に付することができない」とは
①非行事実がない,または非行事実があるという蓋然性が認められない場合と,②少年に死亡,疾病等の事情が生じた場合があります。
①は,要するに少年が無罪の場合です。
・「保護処分に付する必要がないと認めるとき」とは
①調査・審判の過程で,もはや少年に再非行の可能性が認められなくなった場合,
②他の事件について保護処分に付されているために,本件で処分をする必要がないと認められる場合,
③非行事実が極めて軽微な場合の3つがあります。
・不処分決定の効果
不処分となった場合,なんらの保護処分もなされないということになります。不処分の時点で,少年事件の手続きは終了となります。
なんらの処分がなされないことから,少年が再非行に走らないため,本人がしっかりと非行について考えて今後の人生につなげていくことが重要です。
・審判の不開始
家庭裁判所は,調査の結果,審判を開始するのが相当であると認めるときは,その旨の決定をしなければなりません(少年法21条)が,家庭裁判所は,調査の結果,審判に付することができず,または審判に付するのが相当でないと認めるときは,審判を開始しない旨の決定をしなければなりません(少年法19条1項)。これが,審判の不開始です。こうなれば,少年事件の手続きはそこで終了し,家庭裁判所に赴く必要もなくなります。
なお,本人が20歳以上と判明した場合については,家庭裁判所は,不開始決定を行い,検察官に送致します(少年法19条2項)。
不処分と審判の不開始は,なんらの保護処分もなされないまま少年事件の手続きが終了する点は共通しています。ただ,不処分の場合には,審判を行った上で保護処分を行わないことを決定するのに対し,審判の不開始の場合,そもそも審判すら開かれないという違いがあります。審判不開始となることで,少年が事件を起こしたことを大きな問題ととらえず,少年が内省を深める機会を失う恐れがあることには注意が必要です。
審判不開始を目指す場合,付添人としては,捜査段階から弁護人として活動していたときは,それまで弁護活動の成果を早期に裁判所に伝え,審判不開始を求める意見書を提出するなどの活動を行います。