外国人事件

・日本の刑事手続きの特色

日本の刑事手続きのうち,起訴前の捜査の段階では,取調べに弁護人を立ち会わせることはできません。

また,起訴前では保釈はありません。保釈されるのは起訴されてから後のことです。起訴前に被疑者が身柄を解放され得るのは,勾留が取り消されるか勾留期間満了により釈放されるかです。

したがって,捜査段階では取調べ前に弁護人と密接に打合せをしておく必要があります。そのためにも,通訳が重要となります。

 

・通訳

日本の手続きはすべて日本語で行われるため,通訳が適切になされることは非常に重要となります。しかしながら,そもそも通訳が付されずに手続きが進むこともあり,また通訳が付されたとしても,捜査機関が付した通訳では公平な立場から通訳がされている保証はありません。必要と判断したときは,弁護士の方から通訳人を選任します。

通訳は,一言一句毎に正確に通訳される必要があります。被疑者・被告人が手続きを理解するために必要であるとともに,取調べ対策において重要となります。例えば,その外国人の母国語では同じ言葉でも日本語では異なる意味で用いられることもあり,被疑者・被告人の主張が正しく伝えられないことになります。

 

・取調べへの対応

警察官や検察官の取調べにおいては,弁護士の立ち合いも認められず,捜査機関の付した通訳により,最悪通訳なしで進められます。特に,供述調書はその意味を正確に伝えられず,署名指印させられてしまうおそれがあります。供述調書の署名指印は拒否することができますので,基本的に拒否するべきです。なお,事件によっては捜査段階から供述調書がある方が良い場合もありますが,弁護士の方で供述調書を作成して検察官などに提出することもできますので,捜査機関に作ってもらう必要はありません。

 

・在留資格がない場合

在留資格がない外国人が懲役や禁錮の実刑判決を受けたときは,刑の執行が終了した後入国管理局に収容され,退去強制させられます。

執行猶予判決を受けたときは,判決言い渡し後直ちに入国管理局に収容され,退去強制させられます。

無罪判決が言い渡されれば,被告人勾留の効力は失われ,被告人は法廷で釈放され,直ちに入国管理局に収容され,退去強制されます。ところが,検察官が控訴した場合は,控訴審裁判所が逆転有罪判決を下したときに刑の執行を確保できるよう被告人勾留をする場合があります。

 

・在留資格の更新

本邦に在留する外国人は在留期間の更新を受けることができ,法務大臣は在留期間の更新を適当と認めるに足りる理由があるときに限り,これを許可することができます(出入国管理及び難民認定法(以下では,「入管法」といいます。)21条)。更新を許可するかどうかは法務大臣の裁量にかかっています。

在留期間更新の許可についてのガイドラインである「在留資格の変更,在留期間の更新許可のガイドライン」には,考慮事項として「1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること,2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること,3 素行が不良でないこと ,4 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること,5 雇用・労働条件が適正であること,6 納税義務を履行していること,7 入管法に定める届出等の義務を履行していること」が挙げられています。

特に3について「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」とされています。

刑事事件で罰金刑に留まったとしても,次の更新の際に素行が良好でないと評価され,在留資格が更新されないおそれがあります。

 

・退去強制事由があるとき

退去強制事由に該当すれば,在留資格があっても強制退去させられることになります。刑事事件を起こした場合,旅券法違反,集団密航,薬物関係事件(入管法24条4号)の場合,有罪判決が確定すれば退去強制事由に該当します。それ以外の罪では,1年を超える懲役刑や禁錮刑の実刑を受けた場合に退去強制事由に当たることになります。

 

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