犯収法違反(口座の売買)について

・犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)の概要

犯罪収益移転防止法は,マネーロンダリングなどの疑わしい取引に対応するため制定された法律です。

口座が疑わしい取引に用いられないようにするため,口座開設の際の本人確認や疑わしい取引の報告等が金融機関に求められています。

 

・口座売買の規制の概要

犯収法28条1項は,他人に成りすます目的で通帳やカードを譲り受ける等した場合を,同条2項は相手が他人に成りすます目的を有していることを知りながら,口座等を譲渡する場合を処罰しています。(※1)

 

・犯収法28条が適用される場合

犯収法28条が適用されるのは,以前に正当に開設した口座を売ってしまう場合などです。有償で譲渡,すなわち預貯金通帳を売ってお金をもらった場合,正当な理由がなければ犯罪となってしまうのです。  

これに対し,最初から他人に譲渡する目的で口座を開設した場合は銀行に対する詐欺罪が成立します。銀行は,犯罪収益移転防止法の関係もあり,口座そのものや,カードなどを譲渡することを禁止しています。そのため,仮に銀行が本当の目的(口座の譲渡)を知っていたならば,口座を開設し,通帳やカードを交付することはなかったといえます。そのため,口座譲渡の目的を隠したまま,口座を開設し,通帳やカードの交付を受けた場合には,詐欺罪が成立することになります。

 

                

(※1) 第28条  

  1. 他人になりすまして特定事業者(第2条第2項第1号から第15号まで及び第36号に掲げる特定事業者に限る。以下この条において同じ。)との間における預貯金契約(別表第2条第2項第1号から第37号までに掲げる者の項の下欄に規定する預貯金契約をいう。以下この項において同じ。)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として,当該預貯金契約に係る預貯金通帳,預貯金の引出用のカード,預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(以下この条において「預貯金通帳等」という。)を譲り受け,その交付を受け,又はその提供を受けた者は,1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに,有償で,預貯金通帳等を譲り受け,その交付を受け,又はその提供を受けた者も,同様とする。
  2. 相手方に前項前段の目的があることの情を知って,その者に預貯金通帳等を譲り渡し,交付し,又は提供した者も,同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに,有償で,預貯金通帳等を譲り渡し,交付し,又は提供した者も,同様とする。
  3. 業として前2項の罪に当たる行為をした者は,3年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。

 

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