・保釈とは
保釈とは,保証金の納付を条件として,勾留の執行を停止し,拘禁状態を解く制度のことです。保釈は,拘禁状態を解くことによって被告人の権利・利益の制約を最小限にとどめつつ,保証金の没取を心理的強制として身体保全の目的を達成する制度です。
保釈の請求ができるのは,勾留されている被告人またその弁護人,法定代理人,保佐人,配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹です。
保釈は起訴後のみ可能で起訴前には保釈制度はありません。保釈請求は起訴があれば,公判が始まる前でも後でも判決が確定するまでの間であれば,いつでもできます。
・権利保釈,裁量保釈,義務的保釈
保釈には,権利保釈と裁量保釈という二つの類型があります。
保釈の請求があった場合,除外事由がない限り,保釈は原則として認められることになります。このことを指して,権利保釈といいます。除外事由は,
- 死刑,無期または短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯したものであるとき,
- 前に死刑,無期または長期10年を超える懲役・禁錮に当たる罪について有罪の宣告を受けたことがあるとき,
- 常習として長期3年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯したものであるとき,
- 罪証隠滅の疑いに相当な理由があるとき,
- 被害者その他事件の審判に必要な知識を有する者またはその親族の身体・財産に害を加え,またはこれらの者を畏怖させる行為をする疑いに相当な理由があるとき,
- 被告人の氏名または住所がわからないときです。
裁量保釈は,権利保釈の除外事由に当たる場合でも,裁判所が適当と認める場合に職権で保釈を許す場合のことをいいます。また,裁判所は,保釈請求がなくても,適当と認める場合には保釈を許すことができ,この場合も裁量保釈に当たります。
そして,勾留による拘禁が不当に長くなった場合には,裁判所は,請求または職権で保釈を許さなければなりません。これを義務的保釈といいます。
・保釈支援協会
保釈金を立て替えてくれる社団法人があります。一般社団法人日本保釈支援協会です。この社団法人は,刑事被告人の保釈について,保釈保証金の準備に困っている方々の支援をすることを目的に集まった有志の団体です。
保釈金の相場は150万円から200万円程度と高額です。しかも,保釈金は,基本的に現金での一括払いですので,急に集めるのは難しい場合もあります。そのような場合,保釈支援協会は担当弁護士やご家族を保証人にして,最大500万円まで立て替えてくれます。
・保釈保証金は返ってくるのか
保釈保証金は,身柄解放の代わりに一旦国に預けるお金です。勾留が解かれれば,国が保釈保証金を預かっている必要はなくなりますから,保釈保証金は返還されることになります。裁判所が指定する刑事裁判に出頭することで,保釈保証金は戻ってきます。
また,例え有罪判決を受けた場合であっても,勾留が終わっていることは変わりませんから,保釈の際に禁止されていた行為をしたり,指定された裁判に出頭しなかったような場合でなければ,保釈保証金は全額戻ってきます。