・少年鑑別所について
少年鑑別所とは,医学・心理学・教育学・社会学その他の専門的知識に基づいて,少年の資質の鑑別を行う,法務省管轄の施設です(少年鑑別所法3条・16条)。
少年鑑別所では,主として,技官との面接や各種の検査等による資質鑑別や鑑別所内での行動観察が行われます。
身体を拘束されるというマイナスの面がある一方で,面接や行動観察を通じ,少年の心身の鑑別が行われることにより,少年の更生に資するというプラスの面もあります。
例えば,家庭環境や交友関係等の問題が非行の原因にある場合など,外部環境から隔離され,静かな環境でゆっくりと自分自身を見つめる時間を持つことが,少年の更生へのきっかけとなることもあります。
心身の鑑別によって,それまで気づかれなかった発達障害や精神障害が発見され,それによって少年に対し適切な環境を整えるヒントが得られる場合もあります。
・少年院について
少年院とは,家裁から保護処分として送致された者および少年法56条3項の規定により少年院において刑の執行を受けるものを収容し,これに矯正教育を授ける施設です(少年院法3条)。
少年院に入ってしまえば,基本的に外出はできず(少年院法45条1項),規律に違反した者には懲戒が行われます(少年院法113条1項)。
少年院では,少年を社会生活に適応させるため,その自覚に訴え紀律ある生活のもとに,教科教育,職業補導,適当な訓練および医療をさずける矯正教育を行うものとされています。
少年院は決して罰を与える施設ではありません。あくまで少年の更生を促進するための施設として位置づけられているものです。
・両者の違い
少年院送致は,審判の結果,裁判官が保護処分として決定します。一方,少年鑑別所への送致は,その保護処分の決定をするために必要があるとして,決定が下されます。
施設についても,少年院は少年をその特性に応じた適切な矯正教育その他の在院者の健全な育成に資する処遇を行うことにより,在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ることを目的とする所です(少年院法1条)。一方で,少年鑑別所は少年の資質について調査し,家庭裁判所の決定のための資料とするための施設です。
鑑別所に収容される期間は,原則として2週間で,1回の延長が認められています。したがって,通常の場合であれば,最大で4週間です。なお,死刑,懲役または禁錮にあたる罪の事件で,非行事実の認定に関し,証人尋問,鑑定,検証を行うことを決定したもの又は行ったものについて,少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には,さらに2回を限度で更新が可能です(少年法17条4項)。
これに対し,少年院での在院期間については,法律上の種類ではありませんが,以下の3種類の処遇に応じて異なる運用がされています。
- 長期処遇…原則2年以内,平均1年程度
- 一般短期処遇…原則6か月以内,平均150日程度
- 特修短期処遇…原則4か月以内,平均100日程度(非行程度が進んでおらず,解放処遇に適する者を対象)
1.の長期処遇の中には,非行の重大性等により,「比較的長期」(2〜3年)や「相当長期」(3年~5年)があります。
2.及び3.は,第一種少年院だけで行われています。