・告訴とは
告訴とは,犯罪の被害者その他一定の関係者が,捜査機関に対して犯罪事実を申告し,犯人の訴追ないし処罰を求める意思表示のことです。
なお,告訴権者及び犯人以外の者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し,その犯人の訴追を求める意思表示を告発と言います。告発は,代理人によることができず,請求期間に制限がない点等で告訴と異なります。
・告訴できる人(告訴権者)
告訴ができるのは,原則として被害者,被害者の法定代理人(親権者,成年後見人等)です。
しかし,被害者が死亡した場合には,被害者の配偶者,直系の親族,兄弟姉妹は告訴をすることができます。ただし,被害者の明示した意思に反して告訴をすることはできません。
また,被害者の法定代理人が被疑者の場合には,告訴権者は被害者の親族にまで広がります。被疑者の法定代理人が被疑者の場合とは,例えば,子どもが両親から虐待を受けていたり,高齢者の後見人が横領を行なった場合です。ここでの親族は,被害者の配偶者,四親等内血族,三親等内姻族です。
さらに,被害者が死亡している場合の名誉棄損罪については,告訴権者は被害者の配偶者,親族,子孫まで広がります。この場合でも,生前に被害者が告訴を希望しないことを明示しているときは告訴することができません。
なお,親告罪で告訴できる人物がいない場合には,検察官が利害関係人の申し立てにより告訴できる人物を指定することができます。
・相手から「刑事告訴する」と言われたら
警察をはじめとした捜査機関が告訴を受理した場合,捜査機関には捜査義務が生じますので,告訴の内容どおりの犯罪があった証拠があるような場合でないと,捜査機関は告訴をなかなか受理しません。したがって,身に覚えがないことについて告訴されたとしても,問題がないことが多いといえます。
仮に,罪を犯したという自覚があるのであれば,早期に当人同士で和解し,告訴をしないようにしてもらうため,謝罪・弁償を行うべきです。
・告訴により捜査機関の捜査が開始してしまったら
既に刑事告訴されてしまい,捜査機関から捜査を受けている場合,逮捕されてしまうこともありえます。早急に弁護士に相談し,相手(被害者)と示談,刑事告訴の取り下げの交渉をしてもらうことが必要です。告訴が取り下げられれば,逮捕を免れることができる可能性があります。示談交渉は当事者同士ではなかなか上手くいかないことが多いので,弁護士に相談し,弁護士に交渉してもらうようにして下さい。
・虚偽告訴罪について
身に覚えのない刑事告訴をされた場合,相手を虚偽告訴罪で逆に刑事告訴することができることもあります。
虚偽告訴罪とは,人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で,虚偽の告訴,告発その他の申告をした場合に成立する犯罪です。例えば,示談金目当てに,実際にはされていないのに痴漢されたとして告訴する場合などです。