交通違反と名義を偽ること
交通違反と名義を偽ることについて、あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【事案の概要(*フィクションです)】
藤枝市に住むAさんは数年前に免許取り消し処分となりましたが、以降免許を再取得することなく、無免許のまま自家用車を運転していました。
ある日、Aさんは速度超過をしたとして、パトロール中の静岡県警察藤枝警察署の警察官に呼び止められ、供述調書に記載を求められました。
無免許運転が発覚することを恐れたAさんは、供述調書に知人のBさんの名前を記載しました。
数日後、藤枝警察署が供述調書を確認したところ、Aさんと供述調書の名義人が違うことが判明したため、Aさんは道路交通法違反(無免許)と有印私文書偽造罪の疑いで逮捕されました。
【有印私文書偽造罪とは?】
有印私文書偽造罪とは、刑法第159条1項に規定される犯罪です。
行使の目的で他人の印章・署名を使用して権利義務若しくは事実証明に関する文章等を偽造する、又は偽造した他人の印章・署名を使用して文章を偽造することにより成立する犯罪で、「三月以上五年以下の懲役」が罰則規定として定められています。
第百五十九条
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
同罪の「偽造」とは、文章の作成権限のない者が名義を偽って他人名義の文章を作成し、名義人と作成者の人格の同一性に齟齬(不一致)を生じさせることをいうとされます。
今回のケースでは、Aさんは当然Bさん名義の文章を作成する権限を有していません。
にもかかわらず、Bさん名義で供述調書を作成し、これによって名義人(Bさん)と作成者(Aさん)の人格の同一性に齟齬を生じさせているため、Aさんには有印私文書偽造罪が成立すると考えられます。
【事案の特殊性から示談は難しい】
有印私文書偽造罪は「三月以上五年以下の懲役」と規定され、罰金刑がないため、起訴された場合は必ず正式な裁判となります。
刑事処分の軽減のためには弁護士による示談交渉が一般的ですが、今回のケースでは示談の締結は難しいといえます。
これは、今回の被害者が警察(公的機関)であるためです。
被害者が警察等の公的機関の場合、「国」が被害者であると考えられるため、基本的には示談に応じてくれません。
したがって、示談による不起訴処分の獲得はほとんど見込めません。
【少しでも刑事処分を軽くするためには…】
示談が出来ない場合でも、執行猶予付き判決を求めるなど、実刑を回避するための弁護活動は可能です。
例えば、示談の申入れをしていた書面を残すことにより、誠意ある対応に努めたことや、贖罪寄附をすることが考えられます。
特に今回のケースであれば、無免許運転の発覚を恐れたことを理由に名義人を偽っていますから、自家用車を処分するなど、再び無免許運転をしないことを約束することも重要になるでしょう。
また、情状証人による嘆願などの情状弁護により減刑を求めたり、きちんと反省をしていることを示すことも重要です。
このように、刑事事件に強い弁護士が適切な弁護活動を行うことで、不起訴処分や執行猶予を獲得できる場合があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。