略取・誘拐・人身売買

・略取・誘拐とは

略取・誘拐とは,人をその生活環境から離脱させ,自己又は第三者の事実的支配下に置くことをいいます。暴行や脅迫などの強制力を用いて行われるのが略取,誘惑や詐術を用いて行われるのが誘拐です。

略取及び誘拐,人身売買,移送,引き渡し等については,未遂も処罰されます(刑法228条)。

 

・未成年者略取及び誘拐

未成年者を略取し,又は誘拐した者は,3月以上7年以下の懲役に処されます(刑法224条)。未成年者は環境を変えられることによる影響が大きいことから,略取誘拐の目的にかかわらず,犯罪が成立します。なお,営利目的や身代金目的での略取・誘拐はより重い刑を科せられるため,これらの罪が成立する場合は未成年者略取・誘拐は成立しません。

 

・営利目的等略取及び誘拐

営利,わいせつ,結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で,人を略取し,又は誘拐した者は,1年以上10年以下の懲役に処されます(刑法225条)。

 

・身代金目的略取等

近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で,人を略取し,又は誘拐した者は,無期又は3年以上の懲役に処されます(刑法225条の2第1項)。人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて,その財物を交付させ,又はこれを要求する行為をしたときも,同様に無期又は3年以上の懲役に処されます(第2項)。

第1項の罪を犯した者を幇助する目的で,略取され又は誘拐された者を引き渡し,収受し,輸送し,蔵匿し,又は隠避させた者は,1年以上10年以下の懲役に処されます(刑法227条2項)。

また,当初の略取・誘拐に関与しなかったとしても,その状態を利用して身代金目的で改めて動いた者もまた処罰されます。近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で,略取され又は誘拐された者を収受した者は,2年以上の有期懲役に処されます。略取され又は誘拐された者を収受した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて,その財物を交付させ,又はこれを要求する行為をしたときも,同様に処罰されます(刑法227条4項)。

これらの罪を犯した者が,公訴が提起される前に,略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは,その刑を減軽されます(刑法228条の2)。

身代金目的の略取及び誘拐は,その目的で予備をした者も,処罰され,2年以下の懲役に処されます。ただし,実行に着手する前に自首した者は,その刑を減刑され,又は免除されます(刑法228条の3)。

 

・所在国外移送目的略取及び誘拐

所在国外に移送する目的で,人を略取し,又は誘拐した者は,2年以上の有期懲役に処されます(刑法226条)。

 

・人身売買

人を買い受けた者は,3月以上5年以下の懲役に処されます(刑法226条の2第1項)。

未成年者を買い受けた者は,3月以上7年以下の懲役に処されます(刑法226条の2第2項)。

営利,わいせつ,結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で,人を買い受けた者は,1年以上10年以下の懲役に処されます(刑法226条の2第3項)。人を売り渡した者も,同様に処罰されます(第4項)。

所在国外に移送する目的で,人を売買した者は,2年以上の有期懲役に処されます(第5項)。

 

・被略取者等所在国外移送

略取され,誘拐され,又は売買された者を所在国外に移送した者は,2年以上の有期懲役に処されます(刑法226条の3)。

 

・被略取者引渡し等

未成年者略取及び誘拐,営利目的等略取及び誘拐,所在国外移送目的略取及び誘拐,人身売買,被略取者等所在国外移送の罪を犯した者を幇助する目的で,略取され,誘拐され,又は売買された者を引き渡し,収受し,輸送し,蔵匿し,又は隠避させた者は,3月以上5年以下の懲役に処されます(刑法227条1項)。

営利,わいせつ又は生命若しくは身体に対する加害の目的で,略取され,誘拐され,又は売買された者を引き渡し,収受し,輸送し,又は蔵匿した者は,6月以上7年以下の懲役に処されます(刑法227条3項)。

身代金目的略及び誘拐についてこれらの罪を犯した場合は,先述のように,より重く処罰されます(刑法227条2項4項)。

 

・親告罪

未成年者略取の罪及びこの罪を幇助する目的で犯した引き渡し等の罪並びにこれらの罪の未遂罪は,告訴がなければ公訴を提起することができません(刑法229条)。

 

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