静岡県伊豆市でオレオレ詐欺の被害
多種多様な手口で高齢者を狙うオレオレ詐欺などの特殊詐欺犯罪について、その最新の手口とその法的責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件例】
ある日、静岡県伊豆市在住の年金受給者Vさんのもとに、東京に住む息子を名乗る男性A1から電話がかかってきました。
いわく、A1は不倫女性を妊娠させてしまい、女性の夫から損害賠償請求をされたため、早期にまとまった金額の現金が必要とのことです。
Vさんは、息子が有名企業に勤めていることを誇りに思っており、息子の社会的信頼を守るために銀行から数回にわたって現金を引き出し、法律事務所の事務員を名乗る男性A2に現金約800万円を手渡しました。
その後、銀行から連絡を受けた静岡県警大仁警察署からVさんのもとに連絡があり、最近、女性を妊娠させてしまった損害賠償金を名目としたオレオレ詐欺の被害が相次いでいると知り、Vさんは警察に対して詐欺の被害届を提出しました。
(フィクションです。)
上記刑事事件例は、今年1月26日、神奈川県大和市に住む80代の無職男性が、息子を名乗る男性による電話から、現金を手渡ししてしまったというオレオレ詐欺被害に遭い、現金計1000万円をだまし取られたとの警察発表をモデルにしています。
警察発表によると、今年1月7日、被害者男性宅に息子を装った男と弁護士を名乗る男から電話があり、「不倫した相手が妊娠してしまった。慰謝料を払わないといけない」「示談金として1000万円が必要です。息子さんのためにもなんとか用意してください」などと虚偽の電話がかかってきました。
その後、今月12日から18日までの間、計3回にわたって自宅で、被害者は弁護士事務所の職員を名乗る女に現金計1000万円を手渡し、詐取されたとのことです。
他県警からの情報提供があり、26日に警察官が被害者男性から事情を聴いたところ、詐欺の事実が発覚し刑事事件化しました。
警察は「『急にお金が必要』などという言葉を聞いたら詐欺を疑い、最寄りの警察署に相談してほしい」と注意を呼び掛けています。
【高齢者を狙うオレオレ詐欺の手口】
息子のふりをして高齢者の住む家に電話をかけてお金を振り込ませる、いわゆる「オレオレ詐欺」が話題になったのはおよそ15年ほど前になり、その5年後くらいから、「還付金がもらえる」と偽って銀行ATMを操作させて逆に振り込ませる「還付金詐欺」が登場し手口が巧妙化しましたが、最近では「アポ電」による強盗殺人事件が起きるなど、手口の凶悪化が顕著になっています。
警察庁の統計によれば、平成26年のピークから減ってはいるものの、平成30年の特殊詐欺の認知件数は1万6493件、被害額は約356億8000万円に上るとされ、1日に1億円の被害が出ている計算になります。
このような特殊詐欺の先鋭化や巧妙化の裏事情として、専門家によれば、特殊詐欺では次々に新しい手口が出てきて、国民生活センターがまだ注意喚起していない手口も多々あるものの、公にすると模倣犯を生むので、公開しないこともあるそうで、昨今では、息子を騙る特殊詐欺の手口において、息子本人に電話をかけたのにつながらないという状況を作り出し、息子が電話に出られない説得力のある環境を作り出して高齢者の緊迫感を煽る手口が洗練化しているようです。
特殊詐欺を実行するグループは、詳細な役割ごとで構成されるピラミッド型の組織構造になっており、完璧なマニュアルが準備され、構成員らは営業マンのように目標金額を課されて電話をかけ続け、脱退を望む者には制裁を科す等して、特殊詐欺を成功させるためのノウハウが日進月歩で蓄積されているようです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にも、受け子や出し子といった特殊詐欺グループの末端に参加してしまった未成年者や20代の若い被疑者の相談を受けることも多く、特殊詐欺の刑事事件では、組織的犯行による実態から、逮捕や勾留される可能性が非常に高く、一度拘束された被疑者の釈放を求めることが難しいこと、また、特殊詐欺の悪質性と被害抑止の観点から、検察官は高い確率で詐欺罪で起訴すること、少年事件であれば、家庭裁判所で審判が開かれ、少年院送致される可能性もあり得ること等を説明しています。
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