・少年院とは
少年院は,審判の結果家庭裁判所から保護処分として少年院送致を言い渡された少年を収容するための施設です。
保護処分は刑罰ではなく,少年に健全な社会復帰をさせるための処分です。少年院は,少年に矯正教育を受けさせ,社会復帰をさせるための施設です。
・少年刑務所とは
少年刑務所は,家庭裁判所による審判の結果,保護処分よりも懲役や禁錮などの刑罰を科すことほうがふさわしいと判断され,刑事裁判にかけられ実刑となった場合に収容される施設です。
犯罪を犯したとしても,少年に刑罰が科されるのは例外的で,原則的には健全な社会復帰をさせるための保護処分が言い渡されます。少年に対して刑罰が科され,少年が少年刑務所に収容されることになるのは,少年が重大な犯罪を犯し,保護処分よりも刑罰を科すのが相当と判断された場合に限られます。
・原則的な少年事件の流れについて
事件を起こし,逮捕された少年は,一度検察官から家庭裁判所へ身柄を送致されます。少年事件の場合,成人の場合と異なり,すべての事件が送致される(全件送致主義)ので,成人事件でいう起訴猶予というものはありません。
そして,事件が家庭裁判所に送致された後,家庭裁判所で審判が行われます(そもそも審判を行わない審判不開始という場合もあります)。審判の結果,そもそも保護処分を科さない決定がされるか(不処分,少年法23条2項),保護観察(少年法24条1項1号),児童自立支援施設または児童養護施設送致(少年法24条1項2号),少年院送致(少年法24条1項3号)という保護処分が相当という決定がされることになります。
・逆送(検察官送致)とは
家庭裁判所が保護処分ではなく刑事処分を科すのが相当だと判断した場合,逆送(検察官送致)といって少年を検察官へ送り返すことになります。この場合,成人とほぼ同等の扱いとなり,検察官が少年を起訴すれば,少年は刑事裁判にかけられることとなります。
逆送の対象となるのは,死刑,懲役又は禁錮に当たる罪の事件で(少年法20条1項),対象外なのは過失傷害等罰金刑以下の刑しかない一部の犯罪です。もっとも,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件(殺人,傷害致死等)であって,その罪を犯すとき16歳以上の少年に係る事件については,原則逆送決定をしなければならないとされています(少年法20条2項)。
一方,特定少年(18歳以上の少年)については,刑の重さに関わらず全て逆送の対象となっています(少年法62条1項)。また,特定少年の場合,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件でその罪を犯すとき16歳以上の少年に係る事件の他に,死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件(現住建造物等放火,強制性交等,強盗等も対象となります)であつて,その罪を犯すとき特定少年に係る事件についても,原則逆送となっています(少年法62条2項)。
逆送になるのは重大な犯罪が多いため,有罪となれば実刑となる可能性が相当あります。そして,少年が実刑判決を受けた場合,少年刑務所に入所することになります。
・逆送(検察官送致)がなされることによる不利益
少年は原則的には,逆送され起訴されても、氏名年齢住居等によりその者が事件の本人であると推知できるような報道(推知報道)が禁止されています(少年法61条)。しかし,特定少年のときに犯した罪により起訴された場合は、略式手続きに付された場合を除いて,推知報道の禁止は適用されなくなります(少年法68条)。
また,少年事件における審判は非公開で行われますが,刑事裁判は公開の法廷で行われることになります。プライベートな情報も当然法廷において顕出さてしまいます。
そして,裁判により有罪となり,実刑判決となれば,少年は刑務所に収容されることになります。少年に対する矯正教育を行う少年院と比べ,教育的処遇は不十分であり,少年の健全な発達や更生を目指すという観点からすると,適当とはいえない場合もあるでしょう。