事後強盗致傷罪と万引き

事後強盗致傷罪と万引き

【事件の概要(6月18日中日新聞掲載の記事を参考にしたフィクションです)】

Aさん(35歳・男性)は、たびたび静岡県菊川市の家電量販店で商品を万引しており、某日、これまでと同様に、同店内の電気ケトルを万引し、店外に出ようとしました。
しかし、連日の万引被害のため警戒にあたっていた警備員(60歳・女性)が、不審な様子のAさんを見つけ、声をかけて制止を求めました。
Aさんは警備員の制止を振り切ろうともみ合いになり、そのまま逃走しましたが、その際に警備員の左膝に軽い怪我を負わせてしまいました。

【万引きは窃盗罪にあたるが…】

万引きは刑法第235条の窃盗罪に該当し、罰則として「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」が規定されます。

刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

しかし、今回のケースのように、万引きが見つかったために逃走しようと暴行などを加えてしまうと、刑法第238条の事後強盗罪となり、強盗罪と同じものとして扱われます。

刑法第238条
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

さらに、逃走の際に相手に怪我を負わせてしまうと、強盗致傷罪となり、罰則として「無期又は六年以上の懲役」という極めて重いものが規定されています。

刑法第240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

【強盗致傷罪は裁判員裁判の対象】

強盗致傷罪は極めて重大な犯罪であり、法定刑に無期懲役が定められています。
そのため、裁判員裁判の対象となる事件となり、厳しい刑事処分が科されるおそれがあります。
今回のケースのように、Aさんが常習的に万引き行為に及んでいたような場合は、その悪質性から実刑判決が下されるおそれもあるでしょう。

【迅速かつ適切な弁護活動が不可欠】

今回のようなケースで、少しでも刑事罰を軽くしたいと希望する場合は、被害者との示談交渉が不可欠です。
示談の内容に、厳しい刑事処罰を求めないという内容の約定を盛り込むことができれば、不起訴処分を獲得できる可能性があります。
また、起訴されたとしても、裁判において、示談の成立や本人の反省、家族等の監視による更生が期待できることなどを適切に主張することで、執行猶予を獲得することも可能です。

類似する裁判例でも、示談の成立や社会内での立ち直りへの期待ができることを適切に主張することで、執行猶予を獲得した例があります(松山地裁平成22年4月28日判決 平成21年(わ)第540号)。
上記裁判例は、万引きをした被告人が、逮捕を免れるため、万引きを発見・追跡してきた女性を含む2人の警備員に対して暴行を加え、両名に傷害を負わせたというものでした。
裁判所は、女性警備員1人に鼻骨骨折の重傷を負わせたことは決して軽くみることはできないとする一方で、示談が成立しており、慰謝料の支払いや被害者に対し謝罪の手紙を何通も送るなど誠実に対応していること、被害者も厳しい刑事処分を望んでいないこと、若年で初犯であるため社会内での立ち直りが期待できることなどから、酌量減軽の上、執行猶予付きの判決を言い渡しました。

このように、事後強盗致傷罪のような、実刑の可能性がある重い犯罪であっても、刑事事件に強い弁護士が適切な弁護活動を行うことで、不起訴や執行猶予を獲得できる場合があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。強盗致傷事件に詳しい弁護士も在籍しております。是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。

 

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