【刑法改正】侮辱事件の裁判例を紹介

侮辱事件の裁判例に関して、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

2019年に起きた乗用車暴走事故に関して、被害者遺族をSNS上で中傷したなどとして、侮辱罪と偽計業務妨害罪に問われた愛知県扶桑町の被告人に東京地裁は、「被害者の心情に配慮することなく一方的に社会的評価をおとしめた」として懲役1年、執行猶予5年、拘留29日(求刑懲役1年、拘留29日)の判決を言い渡した。
判決によると、被告人は2022年3月、SNS上に「金や反響目当てで闘っているようにしか見えません」などと投稿していた。
(静岡新聞「「社会的評価おとしめた」池袋事故遺族を中傷で有罪」(2023/1/13)を引用・参照)。

~侮辱罪と刑法改正~

近年SNSのプラットフォーム化などに伴い、インターネット上での誹謗中傷が社会問題となっています。
その中には、SNSでの誹謗中傷を苦に自死に至った事件など痛ましい事例も少なくありません。
このような社会状況を受け、侮辱罪の法定刑の引き上げを含む改正刑法が成立し施行されました(令和4年7月)。
同改正により、侮辱罪の法定刑には「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金」が追加されるに至っています。

侮辱罪の厳罰化に伴い、名誉毀損事件を含む誹謗中傷の刑事事件化に関心を持っている方も少なくないと思われます。
もっとも名誉毀損罪に関しては一般的にも耳馴染みのある犯罪であるのに対し、侮辱罪について特に名誉毀損との違いについてはよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、まず刑法の条文を見てみると、刑法230条1項は「公然と事実を摘示し、人の名誉を棄損した」場合には、「その事実の有無にかかわらず」名誉毀損罪が成立すると定めています。
これに対し、刑法231条「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」を侮辱罪によって処罰するとしています。
この対比から分かるように、侮辱罪は、名誉毀損罪と異なり、「事実を摘示」することなく人の社会的評価を低下させるような行為を処罰するための規定だということになります。
本事案では、被告人は被害者が「金や反響目当て」で活動しているなどと「事実を摘示」せずに被害者の社会的評価を低下させるような投稿をしており、かかる行為に侮辱罪に該当すると判断されているのです。

~侮辱・名誉毀損事件の刑事弁護活動~

本事案では、被告人に「懲役1年、執行猶予5年、拘留29日」の有罪判決が下されています。
「拘留29日」が侮辱罪に対して下された判決になりますが、注意すべきなのが刑法改正との関係です。
本事案で問題とされた侮辱罪に該当する行為は「2022年3月」にされており、刑罰不遡及の原則から改正刑法ではなく改正前の侮辱罪が適用されることになります。
改正前の侮辱罪(改正前刑法231条)は法定刑として「拘留又は科料」しか定めておらず、侮辱罪のみによって懲役刑や罰金刑に処せられることはありませんでした。
これに対し、改正後に行われた行為に関しては法定刑が引き上げられた侮辱罪が適用されることから、より重い刑事処分が下される可能性があります。
特に近年は著しい社会の変容に伴い刑法の改正も相次いでおり、刑事事件に関する最新の専門知識や実務の傾向をキャッチアップすることは刑事弁護活動するにあたって必須のものとなっています。
したがって、刑事事件を専門に扱い日々知識のアップデートに努めている弁護士によるサポートを受ける重要性は高まっているといえます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、侮辱・名誉毀損事件などを含む刑事事件を専門的に扱っている法律事務所です。
侮辱・名誉毀損事件で逮捕・起訴等された方やそのご家族は、24時間365日対応可のフリーダイヤル(0120-631-881)まで、いつでもお問い合わせ下さい。

 

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