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(事例紹介)通園バスに園児を置き去りにし死亡させたとして業務上過失致死で起訴された事例

2024-01-31

(事例紹介)通園バスに園児を置き去りにし死亡させたとして業務上過失致死で起訴された事例

静岡で刑事事件・加害者弁護

通園バスに園児を置き去りにし死亡させたとして業務上過失致死で起訴された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事案

静岡県牧之原市の認定こども園(いわゆる幼稚園と保育園の機能を併有する施設)において、当時3歳の女の子が通園バスの車内に置き去りにされ、重度の熱中症で死亡した事件で、検察はバスを運転していた当時の園長とクラスの元担任の2人を、業務上過失致死の罪で在宅起訴しました。
起訴状などによりますと、2人は、こども園の駐車場に止めた通園バスの中に、被害者を約5時間にわたって置き去りにして、重度の熱中症で死亡させたとして、業務上過失致死の罪に問われています。
また、この事件では、ほかにもバスの元乗務員とクラスの元副担任も書類送検されていましたが、検察はこの2人を不起訴にしたということです。
(NHK NEWS WEB「通園バス置き去り死亡事件 当時の園長ら2人在宅起訴署」(2023/11/24)を引用・参照。)

~業務上過失致死について~

(業務上過失致死傷等)
第211条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。(後段略)。

刑法211条前段は、身体・生命という重要な利益については、故意行為以外に過失行為からも保護する趣旨で定められた規定です。
刑法は、故意犯の処罰を原則とし、故意のない過失による行為については特別の規定がある場合にのみ処罰しています(刑法38条1項ただし書)。
過失という概念に関しては、理論上は難解な議論が存在しますが、条文上「必要な注意を怠り」と規定されている通り(判例・実務において)これは注意義務違反のことを指すと考えられています。
つまり結果の予見可能性から、結果回避のための注意義務が導かれ、これに違反することが注意義務違反すなわち過失となります。

~刑事弁護士による弁護活動~

本件では事件に関与したと疑われる者に対する捜査は在宅のまま進められ、結果として2人起訴されています(別の2人は不起訴となっています)。
事件発生から起訴に値するかどうかの判断に至るまで1年以上の時間がかかっており、ここに交通事故のようなある程度類型的な判断が可能な事件とは異なる過失行為に関する刑事事件の難しさが表れています。
本件はいわゆる在宅事件であり、起訴された被告人は身体拘束されていませんが、起訴される事件には身体拘束を伴ういわゆる身柄事件も少なくありません。
起訴後において、このような身体拘束から被告人を解放する制度として保釈制度が設けられています(刑事訴訟法88条以下)。
起訴後の勾留は、(起訴前と異なり)原則として2か月(同60条2項)とされており、更新されれば身体拘束の期間はさらに続くことになります。
刑罰ではないのにも関わらず、このような長期にわたって身体の拘束を受けることは耐え難いものとなることは想像にかたくありません。
したがって身柄事件においては、接見を要せず裁判の準備が可能であるといった観点も含め、保釈のための弁護活動が極めて重要になってくるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、業務上過失致死を含む刑事事件を専門的に取り扱っている弁護士が所属する法律事務所です。
業務上過失致死事件で逮捕や起訴されてしまった方やそのご家族は、24時間対応の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐお問い合わせください。

(事例紹介)静岡県内に住む少女と会った男がわいせつ目的面会要求罪等で逮捕された事例

2024-01-24

(事例紹介)静岡県内に住む少女と会った男性がわいせつ目的面会要求罪等で逮捕された事例

着手金0円から 明確な報酬体系

静岡県内に住む少女と会いわいせつ目的面会要求罪等で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事案

静岡県富士宮署は、わいせつ目的面会要求とわいせつ誘拐の疑いでトラック運転手の男を逮捕した。
逮捕容疑は、わいせつな行為をする目的で静岡県内に住む10代少女と会い、約15分間、車で県内を連れ回した疑い。
2人はSNSを通じて知り合い、少女の親が同署に相談し発覚した。
(静岡新聞「わいせつ目的面会要求、誘拐の疑い 男を逮捕 富士宮署」(2023/9/6)を引用・参照。)

~わいせつ目的面会要求罪について~

(16歳未満の者に対する面会要求等)
第182条 わいせつの目的で、16歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
一 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。
二 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること。
三 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。
2 前項の罪を犯し、よってわいせつの目的で当該16歳未満の者と面会をした者は、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する。
3(略)
(未成年者略取及び誘拐)
第224条 未成年者を⋯⋯誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
(親告罪)
第229条 第224条の罪⋯⋯は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

令和5年(2023年)の刑法改正によって、性犯罪処罰規定に大きな変化が生じました。
以下では、新設された「わいせつ目的面会要求罪」に主として焦点を当て、解説いたします。
改正刑法182条は(わいせつな行為に及ぶ等の目的を持って)SNS等を通じて徐々に信頼を得た上で会う約束をするなど、いわゆるグルーミング行為を処罰対象とした規定です。
グルーミング行為は、性被害に発展する危険性があること等から危険視されており、実際にわいせつな行為等に遭う前の段階から年少者を保護する必要が主張されていました。
本罪は、このような議論を背景に新設された規定であり、わいせつ目的を持って、16歳未満の者に対し、同条1項1号~3号の手段によって面会を要求した場合に成立する犯罪です(実際に面会した場合には同2項の罪が成立する余地があります)。
本件では詳細は明らかではありませんが、SNS上で「威迫」「偽計」「誘惑」等を手段として、16歳未満の被害者との面会を要求した疑いがあるものとして逮捕に至ったと考えられます。

~刑事弁護士による弁護活動~

本件では親告罪である未成年誘拐罪でも逮捕されていることから、示談を成立させるなどして被害者及び家族等から告訴を取り下げてもらうことが最も効果的な弁護活動の一つとなります。
上記で解説した面会要求罪は、親告罪ではないものの、告訴を取り下げてもらうことができれば、処分を行う検察官も被害者の意向を尊重した処分を行う可能性が高いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、わいせつ目的面会要求罪を含む刑事事件全般を専門に扱っている法律事務所です。
わいせつ目的面会要求事件等の性犯罪で逮捕された方のご家族は、24時間対応しているフリーダイヤル(0120-631-881)までいつでもお電話ください。

(事例紹介)静岡県浜松市で殺人未遂容疑で現行犯逮捕された男性が不起訴処分になった事例

2024-01-10

(事例紹介)静岡県浜松市で殺人未遂容疑で現行犯逮捕された男性が不起訴処分になった事例

静岡で刑事事件・加害者弁護

静岡県浜松市で殺人未遂容疑で現行犯逮捕された男性が不起訴処分になった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事案

浜松市の自宅で、親族の右胸を小刀で刺し、殺害しようとしたとして(現行犯)逮捕・送検された男性を、静岡地検浜松支部は不起訴処分としました。
地検浜松支部は男性の容疑を殺人未遂から傷害に切り替えて捜査してきましたが、不起訴処分としました。
検察は不起訴の理由を明らかにしていません。
(静岡朝日テレビ「小刀で兄を刺した容疑の47歳弟を不起訴処分 殺人未遂容疑で逮捕・送検 静岡地検浜松支部」(2023/12/22)を引用・参照の上、適宜修正。)

~殺意(殺人の故意)について~

(殺人)
第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
(未遂罪)
第203条 第199条……の罪の未遂は、罰する。
(傷害)
第204条 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

殺人未遂罪(刑法203条、199条)は、未遂罪とはいえ、法定刑の上では「死刑」や「無期懲役」といった極めて重い罰則が規定されています。
これに対し、傷害罪のそれは「15年以下の懲役」とされており、さらに「罰金」刑にとどまる可能性すら残されています。
このように本件のようなケースで、殺人未遂罪と傷害罪いずれの成否が問題となるかは、逮捕された被疑者にとって極めて重要な問題であるかがお分かりかと思います。
この問題にとって大きな分水嶺となるのが、殺意の有無です。
これに関しては、使われた凶器の種類や創傷の部位・程度、犯行前後の行動などからその有無を判断するのが実務の立場といわれています。
殺意は主観の問題であり、究極的にはその人の内心は他人には分からないがゆえに客観的事情を総合考慮してこれを認定することになります(なお、認定にあたって被疑者の自白のみに依拠することは実務上も避けられています)。
本件の事実を見てみると、創傷の部位は身体の枢要部とはいえ左胸ではなく右胸であること、創傷の程度としても軽傷にとどまっていること、また使われた凶器が小刀であり殺傷性が高いとはいい難いことなどから殺意があるとまでは認められなかったものと思われます。

~逮捕後の弁護活動の重要性~

本事案では、被疑者は殺人未遂の疑いで現行犯逮捕されましたが、最終的には不起訴に至っています。
起訴・不起訴という終局処分を決める権限を有する検察官も殺人(未遂)罪という重大犯罪における殺意の認定には極めて慎重であるといわれています。
実務上、起訴段階や捜査段階で「殺人→傷害致死」や「殺人未遂→傷害」などのいわゆる罪名落ちも珍しくありません。
したがって、親族間であっても示談等を成立させるなど逮捕後の弁護活動が奏功すれば、不起訴処分といった逮捕時から考えれば極めて穏当な処分を得ることも不可能ではないといえるでしょう。
とはいえ、当然のことながら罪名で全てが決まるわけではなく、特に法定刑の重い犯罪はケースバイケースであることも否定できませんから、専門家である弁護士にいち早く相談することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、殺人未遂事件を含む刑事事件全般を専門として扱っている法律事務所です。
殺人未遂事件で逮捕された方のご家族等は、24時間対応しているフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお問い合わせください。

自分の家族が特殊詐欺事件で逮捕された―国選弁護人と私選弁護人の違いはどこにある?

2024-01-03

自分の家族が特殊詐欺事件で逮捕された―国選弁護人と私選弁護人の違いはどこにある?

着手金0円から 明確な報酬体系

家族が特殊詐欺事件に加担した嫌疑で逮捕・勾留された事案を想定して、国選弁護人と私選弁護人の違いについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【ケース】

静岡県沼津市在住のAさんは、沼津市内の会社に勤める会社員です。
Aさんは生活苦からSNSで副業を探していたところ、荷物を受け取りに行くことで日当5万円との投稿を目撃し、募集しました。
Aさんは指示役から警察官を装って静岡県沼津市内の指定された高齢者宅に行きキャッシュカードを受け取るよう言われていたため、いわゆる特殊詐欺の受け子と呼ばれる立場であることを認識してい乍ら、行為に及びました。
後日、Aさんの自宅に沼津市内を管轄する静岡県沼津警察署の警察官が来て、Aさんを詐欺罪で通常逮捕しました。

逮捕の知らせを受けたAさんの家族は、国選弁護人がどのような制度なのか分からず、弁護士に質問しました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【特殊詐欺について】

オレオレ詐欺・母さん助けて詐欺・振り込め詐欺のほか、様々な通称があるいわゆる特殊詐欺は、今なお被害件数が多く、被害額も甚大です。
昨年(2023年)も、投資の名目で札幌市・佐賀市の被害者がそれぞれ1.5億円の詐欺被害に遭ったと報道されている反面、海外を拠点に活動している特殊詐欺グループの架け子や指示役らが逮捕されるなど、捜査機関も被疑者の検挙に向けて精力的に捜査しています。

ケースのように被害者宅を訪問して現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」と呼ばれる行為は詐欺罪に当たり、初犯でも被害金額や件数次第で実刑判決を受ける可能性があります。

【刑事手続きの流れ】

刑法をはじめとする各法に触れる行為をした場合、警察官や検察官などの捜査機関によって捜査をされ裁判に付される可能性がありますが、その立場は

・起訴される前:「被疑者」
・起訴された後:「被告人」

となります。
報道などで「容疑者」と呼ばれているのは「被疑者」を指す場合が一般的です。
この被疑者の段階で、捜査機関は捜査を行う上でやむを得ない場合には逮捕し、検察官に送致します。
検察官は、被疑者の捜査を行う、あるいは警察官に捜査指揮したうえで、起訴するべき事案であると判断した場合、裁判所に公判請求(起訴)します。
逆に、証拠が十分でない場合や起訴する必要がないと判断した場合等には、被疑者を不起訴とします。

【被疑者段階での国選弁護人と私選弁護人】

被疑者になった時点で、弁護士を弁護人として選任する権利があります。
この場合に国選弁護人と私選弁護人のいずれを選ぶべきなのか、ということになりますが、国選弁護人が選任される場合とは

・被疑者が勾留されている
・原則として資力(現金と預貯金)が50万円未満

とされています。
そのため、資力がある(弁護人を自ら選任するほどの余裕がある)場合や勾留されていない場合には、国選弁護人は選任されません。

国選弁護人のメリットは、原則として費用負担がかからない(国が負担する)ことになるという点です。
国選弁護人を選任する上で注意したい点としては、①国選弁護人を選ぶことができないため刑事弁護の経験が少ない弁護士が選任されることがある、②国選弁護人は被疑者(・被告人)の弁護人であり家族の依頼ではないため、家族に連絡・報告をしないこともある、③国選弁護人の報酬は極めて少ないため、モチベーションが高くない場合がある、といった指摘があります。

他方、私選弁護人は、資力などの要件がないため、捜査対象である被疑者となっていれば、逮捕・勾留の如何に関わらずいつでも選任することができます。
但し、弁護士費用は(保険による弁護士費用特約で減免できる場合もありますが)基本的に全額自己負担ですので、その点は留意する必要があります。

【被告人段階での国選弁護人と私選弁護人】

起訴された被告人については、被疑者段階で勾留されていて国選弁護人が就いている場合、引き続き同じ弁護士が国選弁護人として弁護をします。
在宅で捜査を受けた、あるいは釈放された状態で起訴され被告人の場合、「弁護人選任に関する回答書」という書類が届きます。

基本的に、資力がある方は私選弁護人に弁護を依頼する必要があります。
しかし、刑事事件は民事事件と異なり、

刑事訴訟法289条1項 死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。

と定められているため、ほとんどの事件で弁護人がいなければ刑事裁判を開廷することができないことになっています。
ケースの場合、特殊詐欺による詐欺事件で起訴されたという事例を想定しています。
詐欺罪は刑法246条1項で「10年以下の懲役に処する。」と定められていますので、「長期3年を超える懲役…にあたる事件を審理する場合」に該当し、必要的弁護事件となるため、必ず弁護士が弁護人に就いている必要があります。
そこで、資力がある場合でも、事情により私選弁護人に依頼することができない場合には、国選弁護人が選任されます。

【弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所について】

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所には、日々多くの相談・接見の依頼が寄せられます。
例えば、
・国選弁護人が就くタイミングを知りたい
・国選弁護人から連絡がない
・国選弁護人から「私はほとんど経験したことがない事件」と言われ不安に思っている
・別の私選弁護人に弁護を依頼しているが弁護士を代えたい
など、その内容は様々です。
当事務所では、国選弁護人が就いている場合でもそうでない場合でも、被疑者・被告人の方が逮捕・勾留されている際は先ずは「初回接見サービス(有料)」をご案内しています。
初回接見サービスは、当事務所の刑事事件・少年事件を専門とする弁護士が、弁護人となろうとする者という立場で接見をするものです。

刑事訴訟法39条1項 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。

通常、国選弁護人が就いている場合に私選弁護人を選任した場合、国選弁護人は自動的に解任されることになりますが、弁護人となろうとする者が接見する場合には国選弁護人は就いたままの状態が維持されます。
そのため、国選弁護人が就いている場合でも、当事務所の弁護士による初回接見サービスを利用して、その弁護士の説明を聞いた上で国選弁護人に引き続き弁護を依頼するか当事務所の弁護士を私選弁護人として選任するか、検討することができます。

静岡県沼津市にて、家族が特殊詐欺事件で逮捕・勾留されていて国選弁護人と私選弁護人のどちらにするか検討されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡ください。

(事例紹介)窃盗の疑いで逮捕・送検された静岡市内の男性を静岡地検が不起訴にした事例

2023-12-27

(事例紹介)窃盗の疑いで逮捕・送検された静岡市内の男性を静岡地検が不起訴にした事例

窃盗

窃盗の疑いで逮捕・送検された静岡市内の男性を静岡地検が不起訴にした事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事案~

静岡地検は、窃盗の疑いで逮捕、送検されていた静岡県静岡市内の男性を不起訴処分とした。
地検は、理由については明らかにしていない。
男性はJR静岡駅北口ロータリーで寝ていた男性会社員のかばんから財布とカードケースを盗んだとして、静岡中央警察署などに逮捕されていた。

(静岡新聞「窃盗疑い逮捕の特支教諭不起訴 静岡地検」(2023/11/7)」を引用・参照の上、適宜修正。)

~窃盗罪における占有について~

(窃盗)
第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法235条(窃盗罪)は、他人の意思に反して他人の物の占有を侵害することを処罰する趣旨の規定です。
詐欺罪等の交付罪とは、物の占有の移転が被害者の意思によるかそうでないかといった点で罪質が異なることになります。
窃取罪が成立するには上記の通り「窃取」という要件を満たす必要がありますが、「窃取」とは(他人の意思に反し)他人の占有を侵害することが前提となっていることから、対象となる財物に被害者の占有が及んでいるかが問題となります。
占有とは、財物に対する事実的支配をいい、これは占有の事実と意思から判断されるものと解されています。
本件では、上記事案の事実の存在を前提とするならば、被害者が寝ていることから占有の意思の減弱が認められうるところ、あくまで盗まれた財物等はカバンの中に入っていたわけですから被害者の占有の事実は強固であり、財物の事実的支配は優に認められるものと考えられます。
なお、詳述はしませんが、窃盗罪の成否においては故意の他に不法領得の意思という主観的要件も問題となることに注意が必要です。

~窃盗事件における刑事弁護活動〜

本事案では、被疑者は窃盗の疑いで逮捕されましたが、後に不起訴処分となっています。
我が国の刑事手続では、検察官の起訴裁量(刑事訴訟法248条参照)が広範に認められており、逮捕(・勾留)されたからと言って、必ずしも刑事裁判になるわけではありません。
不起訴処分にも、罪とならず・嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予など様々な理由に基づくものがありますが、本件ではその詳細は明らかではありません。
そこで、以下では(最も多いと考えられる)起訴猶予について、窃盗事件の特徴との関連を中心に記述することとします。
窃盗罪は、財産犯(財産を侵害する犯罪)の典型であり、国家や社会とは異なり個人の法益を保護している犯罪類型です。
したがって、被害者との示談の成立の有無が、不起訴処分を獲得するにあたって大きなウェイトを占めることになります。
仮に被疑者に前科・前歴等があったとしても、示談が成立していれば十分に不起訴を得る可能性があるため、起訴前の弁護活動が非常に重要と言えます。
このことは、統計上、窃盗罪で(略式手続を除く)正式裁判として起訴される件数が非常に少ないことからも裏付けられていると考えることもできるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件を含む刑事事件全般を専門として扱っている法律事務所です。
窃盗事件で逮捕された方やそのご家族等は、24時間対応可のフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお問い合わせください。

(事例紹介)静岡市清水区の社会福祉法人における業務上横領事件で団体職員の男性らが再逮捕

2023-12-20

(事例紹介)静岡市清水区の社会福祉法人における業務上横領事件で団体職員の男性らが再逮捕

静岡県内の刑事・少年事件

静岡市清水区の社会福祉法人における業務上横領事件で団体職員の男性らが再逮捕された事案について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事案~

静岡市清水区の社会福祉法人から資金を横領した疑いで逮捕された前理事長ら男2人について、警察は2人がさらに約2900万円を横領した疑いで再逮捕しました。
再逮捕されたのは、団体職員の男(52)と静岡市清水区の社会福祉法人の前理事長の男(43)2人です。
警察によりますと、2人は2022年10月から11月にかけて社会福祉法人の口座から関連会社など複数の口座に少なくとも十数回以上送金するなどして、現金約2900万円を横領した疑いが持たれています。
警察は2人が容疑を認めているかどうか明らかにしていませんが、使途不明金は7000万円に上るとみられていて、警察は引き続き金銭の流れを慎重に捜査しています。
また静岡地検は、2人が共謀して同じ社会福祉法人から1500万円を横領したとして起訴しています。
(テレビ静岡「さらに2900万円を社会福祉法人の資金から横領か 前理事長と団体職員を再逮捕 静岡」(2023/12/11)を引用・参照)。

~業務上横領について~

(業務上横領)
第253条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

(業務上)横領罪とは、他人から預かった他人の所有物を着服し自らのものにしてしまう行為を罰する趣旨の規定です(刑法252条、253条)。
業務上横領において刑が加重されているのは、多数人との間の委託信任関係を破壊する点で単純横領のそれよりも法益に対する侵害が重大であるからとも言われています。
上記のように業務上横領(253条)の法定刑が「10年以下の懲役」であるのに対し、単純横領(252条)は「5年以下の懲役」と最高刑が半分であるわけですから、「業務」該当性の検討は非常に重要となります。
ここでいう「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復・継続して行われる事務であって、他人の委託に基づいて他人の物を管理する事務をいうと解されています。
本件では、報道のみでは事実関係が必ずしも明らかではないものの、被疑者らは法人の金銭を保管する事務を行っていたと考えられ業務者に当たると思われます。

~再逮捕事案の弁護活動等~

本件事案では、被疑者らはすでに一部の容疑では起訴されており、余罪の業務上横領が発覚する度に逮捕が繰り返されています。
なお、マスコミ用語でいう「再逮捕」と法律上の「再逮捕」とは異なる概念であり、混同しないよう注意が必要です。
本件のように違う被疑事実で同じ被疑者を再度逮捕することは、法律上は単に異なる容疑で逮捕しただけであり、裁判例(東京地決S47.4.4等)においても厳格な要件が課せられている「再逮捕」(刑訴法199条3項等参照)には当たりません。
以下では、断わりのない限りマスコミ用語でいうところの「再逮捕」(つまり単なる再度の逮捕)の意味で「再逮捕」の語を使用します。

本事案のように余罪が多数見込まれ、再逮捕が繰り返されているような事案ではどうしても身体拘束期間が長引くことが避けがたくなります。
余罪の有無は、起訴後の保釈(刑訴法88条以下)が認められるかの判断にも関わるため、弁護士が接見を繰り返すことも被疑者・被告人の精神面を含めたケアにとって重要となってきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、業務上横領事件を含む刑事事件を専門的に取り扱っている法律事務所です。
業務上横領事件逮捕・再逮捕された方のご家族等は、24時間/365日対応の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までいつでもお電話ください。

(事例紹介)募金詐欺をしたなどと被害者の名誉を毀損する書き込みをした静岡県内の男性が逮捕

2023-12-13

(事例紹介)募金詐欺をしたなどと被害者の名誉を毀損する書き込みをした静岡県内の男性が逮捕

募金詐欺をしたなどと被害者の名誉を毀損する書き込みをした静岡県内の男性が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。

着手金0円から 明確な報酬体系

~事案~

行方不明になった当時小学生の母親の画像をブログに掲載し「募金詐欺」などと書き込んだとして、警察は、静岡県に住む容疑者を名誉毀損の疑いで逮捕した。
逮捕容疑は、ブログに母親の顔が写った画像を掲載し、「募金詐欺をした」などと被害者の名誉を毀損する書き込みをした疑い。
容疑者は「ブログは管理しているが、名誉を毀損したつもりはない」と否認している。
警察によると、被害者から相談を受け、ブログのアカウントなどを捜査した。
(日本経済新聞 「不明女児の母に「詐欺」 名誉毀損疑いで69歳男逮捕」(2020/10/15)を引用・参照)。

~名誉毀損罪について~

(名誉毀損)
第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処る。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
(親告罪)
第232条 この章の罪(注:230条や231条の侮辱罪)は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 (略)

名誉毀損罪(刑法230条1項)とは、「その事実の有無にかかわらず」人の名誉を低下させるような「事実を摘示」すれば、成立しうる犯罪です。
この点は少なくない方が勘違いしていると思われますが、これは同条2項と対比すれば明白となります。
同項は、名誉毀損行為の相手が「死者」である場合は、「虚偽の事実を摘示」した場合でないと同罪は成立しないと定めています。
つまり、裏を返せば1項の名誉毀損罪の成立においては、摘示される「事実」は虚偽である必要はないということなのです。
例えば、本事案において募金詐欺をしたことが仮に事実だとしても、そのような事実は人の名誉を害するおそれがあることから、本罪の成立を妨げません。
そして、本行為はインターネットという世界中から誰でも閲覧できる場所においてなされていることから、「公然」性が否定されることはないでしょう。

~否認事件における刑事弁護活動~

本事案において、逮捕された被疑者は容疑を否認しています。
被疑者には黙秘権が保障(憲法38条1項、刑訴法198条2項等)されており、取調べに対して応答する義務はありません。
このことは否認事件では特に重要であり、都合の良い供述を得ようとする捜査機関に対し、黙秘権を行使することは権利であるということをしっかり認識する(させる)必要があります。
しかし、捜査機関は、黙秘している被疑者に対してもあの手この手を使い、口を開かせようとしてきます。
したがって、弁護士が頻繁に接見するなどして被疑者をサポートとし、取調べ状況を逐一チェックすることが極めて重要となります。
なお、名誉毀損罪に関しては230条の2が、例外的に罰されない場合について定めており、この点についても留意が必要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、名誉毀損事件を含む刑事事件を専門に取り扱っている法律事務所です。
名誉毀損事件で逮捕・起訴等された方やそのご家族は、24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお電話ください。

(事例紹介)盗撮した嫌疑で性的姿態等撮影罪で逮捕されるものちに不起訴になった事例

2023-12-06

(事例紹介)盗撮した嫌疑で性的姿態等撮影罪で逮捕されるものちに不起訴になった事例

静岡で刑事事件・加害者弁護

性的姿態等撮影罪、いわゆる盗撮罪で逮捕後に不起訴になった事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事例

静岡地検富士支部は、性的姿態撮影処罰法違反の疑いで逮捕、送検された男性会社員を不起訴処分とした。
男性は富士市内の宿泊施設で被害者の性的な姿態を盗撮したとして、富士署に逮捕された。
7月に施行された同法を県警が適用し、逮捕した初めてのケースだった。

(静岡新聞「盗撮容疑の男性を不起訴 静岡地検富士支部」(2023/9/1を引用・参照)

~いわゆる盗撮罪の創設~

(性的姿態等撮影)
第2条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法……第177条第1項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二 刑法第176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三 (略)
四 (略)
2 前項の罪の未遂は、罰する。
3 前2項の規定は、刑法第176条及び第179条第1項の規定の適用を妨げない。

本年(2023年)7月に刑法の性犯罪規定改正の施行と同時に、性的姿態撮影処罰法が創設・施行されました。
これまで本事案のような盗撮行為は、各都道府県が制定するいわゆる迷惑防止条例によって処罰されてきました。
しかし、各都道府県によって規制対象が異なるなど様々な問題点が指摘されており、今回の立法によって盗撮行為の処罰が統一化されることになったのです。
特に今回の立法によって大きく変わったのが、法定刑の厳罰化です。
これまで多くの条例が「1年」と規定していた刑罰が、最高刑が「3年」(上記本法2条の場合)まで引き上げられました。
スマートフォン等の普及などを背景に盗撮被害の増加が叫ばれており、これまで以上に世間(そして司法)から厳しい目を向けられることになることは間違いありません。

~起訴回避のための弁護活動~

一方で、本事案は弁護士による弁護活動が奏功した事案であると考えられます。
その弁護活動も否認事件と被疑者が犯罪事実を認めている自白事件で異なり得ます。
仮に本件が自白事件だとすれば、被害者との示談等による不起訴が依頼者にとって最も有利な処分の一つとして目指すべき弁護活動となるでしょう。
検察官との折衝など弁護士にしかできない活動が、逮捕や送検されてしまった依頼者にとってメリットを生む可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、盗撮事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
盗撮事件で逮捕等された方やそのご家族は、24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)にお電話ください。

(事例紹介)静岡地方裁判所の差し戻し審で懲役5年の言渡しを受けていた男性に対して無罪判決

2023-11-29

(事例紹介)静岡地方裁判所の差し戻し審で懲役5年の言渡しを受けていた男性に対して無罪判決

無罪

静岡地裁で無罪判決が下された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事案

2019年に、伊豆の国市にある福祉施設の工事現場で、同僚の作業員に暴行を加えて死亡させたとして、傷害致死の罪で起訴された男性について、静岡地方裁判所は、「男性の同僚が被害者に対して死亡につながる暴行を加えた疑いが払拭できない」などとして、無罪を言い渡しました。
伊豆の国市にある福祉施設の工事現場で働いていた男性は、2019年9月に同僚だった作業員の男性に何らかの暴行を加えて死亡させたとして、傷害致死の罪で起訴されました。
1審の静岡地方裁判所沼津支部は懲役5年の判決を言い渡しましたが、2審の東京高等裁判所は「別の作業員から死亡につながる暴行を加えられた可能性が否定できない」として審理をやり直すよう命じました。

(NHK NEWS WEB「傷害致死罪で起訴の男性 静岡地裁が無罪判決」(2023/9/21)を引用・参照。)

~差戻し審で無罪判決が確定~

本事件は、1審で「懲役5年」の実刑判決が下されたのにも関わらず、最終的に無罪判決が確定しています。
その経緯を辿ると、まず上記の静岡地裁での1審は、裁判員裁判でした。
いわゆる裁判員法は、「裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの」(2条1項2号)を裁判員裁判の対象事件としています。
そして、裁判所法26条2項2号は「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪⋯⋯に係る事件」と定めていることから、傷害致死罪(刑法205条)は「3年以上の有期懲役」という「短期1年以上の懲役」を法定刑として定めており、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」にも当たることから、対象事件となります。
この裁判員裁判で上記判決が下され、被告人は控訴しました(刑訴法372条)。
2審である東京高裁は、控訴理由があるとして原判決を破棄し、事件を原審たる静岡地裁に差し戻しました(刑訴法400条本文)。
その差戻し審において裁判所は「当時、被告人が『被害者を殴った』と発言していたと同僚が証言しているが、これは自身の刑事責任を免れるための虚偽の証言の疑いがあり、信用できない。この同僚が死亡につながる暴行を加えた疑いが払拭できない以上、被告の暴行を推認することは困難だ」などとして、無罪を言い渡したのです(検察官は控訴せず無罪が確定)。

~冤罪事件における弁護活動~

本事件が辿った経緯に鑑みると、当然ではありますが一般市民たる裁判員(そして職業裁判官)も判断を誤り得るということです。
本件では、同僚の証言が虚偽であった可能性があることが判決において指摘されています。
例えば心理学における実証研究においても、人が嘘を見抜く力はほとんど偶然の領域を出ない(50%をわずかに越える程度)でしかないと言われています。
これは一つの例でしかありませんが、冤罪事件はこういった要因が重なることによって誤判に至るという構造を有します。
弁護士としては、このような複雑に絡み合った要因を突き止め、被告人を冤罪から救うために正確な証拠等の分析が不可欠となります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、無罪獲得実績のある刑事事件専門の法律事務所です。
身に覚えのない事件等で逮捕・起訴されてしまった方やそのご家族は、24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐお問い合わせください。

(事例紹介)静岡市消防局の消防士が不同意性交等の疑い逮捕された事件について検討

2023-11-22

(事例紹介)静岡市消防局の消防士が不同意性交等の疑い逮捕された事件について検討

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今回は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が静岡市で発生した不同意性交事件の被疑者男性の逮捕事例について解説致します。

【事例】

風俗店店員の女性と同意を得ずに性交したとして静岡市消防局に勤務する消防士の男が逮捕されました。
不同意性交などの疑いで逮捕されたのは、静岡市消防局●●署の消防士で●●市に住む34歳の男です。
警察によりますと、容疑者の男は10月25日 午後0時30分ごろ、静岡市葵区内の宿泊施設で県西部に住む37歳の風俗店店員の女性に対して同意を得ずに性交した疑いです。
静岡市消防局によりますと、逮捕された消防士の男は当日の勤務については非番だったということです。
所属消防士の逮捕を受け静岡市消防局の局長は「当局の職員が、不同意性交等で逮捕されたことについては、誠に遺憾であり、大変重く受け止めております。今後、詳細を確認したうえで、厳正に対処してまいります」とのコメントを発表しています。

引用:Yahooニュース「風俗店店員女性に対し同意得ず性交した疑い…静岡市消防局の消防士の男逮捕」10/26(木) 10:39配信
※記事の一部を変更して引用
https://news.yahoo.co.jp/articles/a0cabd39b89fb2a084dc634975a188cb0ea6e668

【解説】

1 不同意性交等罪とは?

不同意性交等罪とは、令和5年に施行された改正刑法で新設された罪です。
従来の強制性交等罪と準強制性交等罪が統合されていて、改正前の強制性交等罪では処罰できなかったケースにも対応できるように内容が変更されています。

2 不同意性交等罪の成立する行為とは?

改正された刑法177条の「不同意性交等罪」では、8つの行為・事由によって「同意しない意思を形成し、表明し、全うすることが困難な状態にさせ、またはその状態にあること」に乗じた性交等を処分しています。

具体的には以下のような行為を明文で規定しています。

① 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
② 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
③ アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
④ 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
⑤ 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
⑥ 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
⑦ 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
⑧ 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

上記のほかにも改正により不同意性交等罪では、その行為がわいせつなものではないと誤信させたり、行為をする者について人違いをさせたりして性交等をした者も処罰対象にしたり(第177条2項)、従来までの性交同意年齢は「13歳」とされていたところを、本改正によって不同意性交等罪における性交同意年齢を「16歳」に引き上げられました。
それにより、16歳未満の人に対して性交等を行った場合は、同意の有無に関わらず不同意性交等罪が成立するようになりました。

3 不同意性交等罪事件のポイント

今回の事例で、男性は不同意性交の嫌疑で逮捕されています。
不同意性交等罪の処罰内容は5年以上の有期拘禁刑のみで、罰金刑はありません。
不同意性交等罪は罰金刑が規定されていませんので、略式起訴されることはなく、検察官が起訴できるだけの証拠があると判断した場合には正式起訴(公判請求)され、刑事裁判になります。
不同意性交等罪のように重い処罰しかない犯罪は、初犯であっても執行猶予ではなく実刑(刑務所に行く)に処される可能性が高くなります。

しかし被害者と示談交渉を行い、被害者が被疑者を赦す「宥恕」の約定を盛り込んだ示談書の取交しができれば、不同意性交等罪であっても不起訴処分となる可能性が高くなります。
また、裁判でも、執行猶予判決が望めることとなります。

よって、不同意性交等罪事件では、弁護士を通して被害者と示談することができるかどうかがポイントになります。

【事務所紹介】

今回は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が静岡市で発生した不同意性交事件の被疑者男性の逮捕事例について解説しました。
上記の解説のように、不同意性交等事件のような被害者のいる犯罪では、被害者との示談や被害弁償をしたか否かが、検察官の起訴・不起訴の判断、裁判所の執行猶予や減刑の判断に大きな影響を及ぼすため、弁護士を通して被害者と示談できるかどうかがポイントの一つとなります。
この際に被害者と加害者が直接交渉を行うと、被害者の加害者に対する感情から状況が悪化する危険があるので、直接交渉は避けて弁護士に間に入ってもらうべきです。
また、不同意性交等罪の場合は供述が重要となることも多く、取調べの前後で弁護士から適切なアドバイスを受けること、刑事裁判になった場合に被告人質問で慌てないために事前に打合せをする、といった様々な弁護活動が考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
被害者との示談交渉の経験も豊富な弁護士が所属しております。
静岡県内で、ご家族が不同意性交等罪で警察官に逮捕されてしまった方や、刑事事件を起こしてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご連絡ください。
逮捕され身柄が拘束されている場合には、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」(有料)をご提供しています。

24時間365日受付中のフリーダイヤル(0120-631-881)

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